松元ヒロは1952年生まれ。僕の丁度10歳年上なので今年、57歳になられる。
鹿児島出身。中学時代から足が速く、中距離ランナーとして有名だった。
その縁で鹿児島実業高校に入り、法政大学に入る。
大学を出てお笑い芸人を目指す。
10年前に自らが始めた「ニュースペーパー・カンパニー」から
独立されピン芸人になる。
松本ヒロのことを初めて知ったのは、立川談志の独演会だった。
その頃は立川談志がどれくらいの人かなんてわからないで見ていた。
もちろん、松元ヒロのことはそれ以上に知らなかった。
しかし、松元ヒロは単純に、面白かった。
その後、志の輔の独演会などでも松元ヒロを見かけ、
テレビに出ない面白い芸人さんという方がいるものだと思った。
テレビに出ないのは原因がある。
これは松元さん本人が舞台上で語られるのでそれを聴いて納得。
テレビでオンエアー出来ないラディカルな政治批判や
天皇制を題材にとったもの、そのような様々なテレビ的には
タブーと思われることを自由闊達に語るので放送できないからであると。
しかしながら、こういった芸人さんを生で見たいと
紀伊国屋ホールが埋まる。
松元ヒロの芸はとっても今の時代にあっているなあと思う。
良く、呼ばれるのが労働組合とか教職員組合の団体だそうである。
ある種の反体制なものが感じられるからなのだろう。
昨年、小林多喜二の「蟹工船」が売れ、格差社会が拡がり、
下流社会の人々が増えるという時代の気分を
笑いで吹き飛ばそうという高邁な精神がここにある。
お笑いをなめるなよー!と声を大にして言いたい。
松元ヒロの笑いは知的レベルが高くそして、現代的なのである。
それを両立させることは大変なことであるのに、
飄々と彼はそれをやってのける。
松元ヒロのもうひとつの特徴はパントマイムが出来ること。
というかパントマイマーである。
今回もパントマイムのシーンがいくつか出てくるが
そのシーンを惹き込まれるように見てしまうのである。
身体の表現が56歳できちんと出来ている姿が表現者として素晴らしい。
そして、そのことはライブを見ないと感じられないこと。
妻の父親がパントマイムをしていたことを思い出す。
ムッシュー・アリマというパントマイマーだった。
公演で、道化師だった父の息子がひとり立ちするために、
自宅から引っ越ししていく話がラストに披露された。
松元ヒロさんの自伝的なエピソードなのか?
それを見て、妻の父のことが重なった。
是非、一度、松元ヒロの芸を!
90分くらいの公演は凝縮されているのでものすごく満足感がある。
批評的な笑いと人情話とパントマイムが融合したピン芸人はなかなかいない。
彼の社会風刺は本当に一見の価値がある。
麻生総理の右肩上がりの唇などというエピソードが満載。