ハワイ島にホノカアという場所があるらしい。
この映画はほぼその町と島の中だけで描かれたもの。
ある種のファンタジー映画となっている。
ほのぼのとした印象がいつまでも残る、ほんわかとした心温まる映画となった。
原作は吉田玲雄。幻冬舎文庫から出ている。
脚本は電通のクリエーティブディレクター、高崎卓馬。
料理は高山なおみ。そして監督はCM界の真田敦。
音楽の選曲には桑原茂一、カメラマンは市橋織江という豪華なキャストである。
フジテレビ・電通・ロボットの三社が製作を務めている。
今回の映画は、今までの映画界の話法にはないようなビックリのプロデュース。
新たな映画界への挑戦であり、今後、広告会社などは
このようなコンテンツを作り続けることがさらに求められてくるようになるだろう。
本作はその試金石とも言えるような実験作品とでも言うのだろうか?
今回の映画の面白いところは、
「ごちそうさま委員会」というものを結成して、
そこに企業が協賛して資金を出してくれているというところ。
企業を集めてくるのは電通の得意技である。
そうして資金を集め、興行収入が還元されるような仕組みを作っているのだろうか?
面白い試みである。
今回の映画ではたくさんの料理が出てくる。どれも美味しそうである。
この食べることを中心にした映画だから「ごちそうさま委員会」が出てきた意味があるというもの。
協賛企業は、
エコナ(花王)、キリンビバレッジ、東京ガス、東洋水産、ほっかほっか亭、明治製菓である。
映画は特に大きな事件が起こるわけでもなく、
淡々とホノカアでの日常が記述されていく。
天国のような素敵な場所でありのんびりとした街。
登場人物は十数名。それで完結している。
そんな場所でのおとぎ話。
大学生の男の子、岡田将生がハワイ島に初めて遊びに来るところから映画は始まる。
市橋織江の透きとおった映像がほのかにやさしい気持ちにしてくれる。
海岸に生えている緑の草があんなにも美しいのかと思い驚く。
蒼井優がその時の彼女。
1年後、岡田は大学を休学してホノカアにやってくる。
何をするでもない毎日。そこで岡田は、ビーさんこと倍賞千恵子に出会う。
このビーさんがいい。
岡田君へ無償の愛を料理という形で与えつづける。
この映画を見ている間思い続けていたのは
「与え続けること」ということ。
無償で相手に与え続けられることのできる人になりたいと思った。
そして自問自答する。
本当にそんなことが自分に出来るのか?
無償で何かを与え続けるということは、愛し続けるという
ことと同義である。
倍賞のホノカな恋心が彼女を少女にする。
しかし、あるときにちょっとした変化がホノカアに起きる。
それによって安定していたホノカアの人間関係にちょっとした変化が起きる。
それがこのホノカアで起きた最大の事件。
(以下、ネタばれ含みます。)
岡田はロコの土産物屋の女の子のことを好きになる。
印象的だったのが岡田の誕生日に彼女を連れてビーさんのところに行き、
三人で誕生パーティをするシーン。
ロコの女の子は岡田に誕生ケーキを買ってくる。
倍賞は後で食べましょうと言って冷蔵庫にケーキを。
その時、冷蔵庫の棚には倍賞(ビーさん)の作った手作りのケーキが置かれている。
そして、その直後ビーさんに事件が起きる。
岡田はすべてを受けれ、無償の愛情を与えることを始める。
最初はチャラチャラした映画かも?と心配したが、
じーんとした優しい滋味にあふれた映画だった。
このようなタイプの映画が、このような製作スタイルで
着実に量産できるようになれば面白いなあと思った。
本日公開!