東京フィルメックス映画祭の特別招待作品。
フィルメックス映画祭も今年で10回を迎える。
オフィス北野は第1回目?から協力をしており、
北野武がCMなどに出ている企業は特別協賛などをしてくれている。
また、フランスの企業である、エアフランスやアニエスベーも
いつも協賛に名を連ねている。
アニエスベーは毎年、スタッフ用の衣装を提供し
観客賞の冠をつけて観客投票を行っている。
アニエスの映画に対する愛情は半端じゃない。
今回、フィルメックスで見たのはこれ1本のみ。
もっと時間を作って、他の作品も見に行けばよかったと
この映画を見て思った。
本作はベルリン映画祭で金熊賞を受賞したもの。
ペルー映画なんて珍しい。
10月に山形ドキュメンタリー映画祭でペルーで作られたドキュメンタリー映画を見た。
これで生涯、二本目のペルー映画となる。
ペルーの首都リマという町は、
平坦な場所にある街に商業施設があり富裕層が住み、
貧困層はその場所から延々と階段を登った高地に暮らしている。
彼らは車などは持っておらないので当然、延々と階段を上る。
水もある場所から汲んでくるという生活が現在も普通に行われている。
高地だからなのか樹木は一切生えておらず、
はげ山となった荒涼たる風景が高地の先に拡がっている。
この国で1980年代から2000年にかけて、
ペルーの農村部をゲリラが襲ったそうである。
「弱いいものが、さらに弱いものを叩く。」という
「トレイントレイン」の歌の一節のような構図がここでは
実際についこの前まで行われていた。
主人公の女性の母親はそのテロでゲリラの男たちに犯される。
その時のことを歌にして、母親は歌う。
オープニングはそのシーンから始まる。
その場所で殺された夫のペニスが切り取られ
口につっこまれながら犯されるという歌詞に戦慄が走る。
そして、その母親が死ぬ。
娘は20歳を過ぎて大人の女になっていた。
彼女はその事件があったことで極度の精神状態から
男を受け付けることができない心の傷を負い、
そのトラウマを背負って暮らしている。
彼女は膣にジャガイモを入れて暮らしている。
そうすることによって男に犯された時でも、男たちは気味悪がって、
それ以上のレイプが避けられるとの思惑がそこにはある。
ある悲痛な決意のもとの決断であり、
そのようなことによってしか
彼女の心の壁は保てない。
ジャガイモは時々芽を出すので定期的に彼女はその芽を摘む。
母親の葬儀費用を捻出するために、
彼女は西洋白人の音楽家である夫婦の元にメイドとして働き始める。
彼女はひとりで街も歩けない。他人が怖いのだ。
信用できる人に付きそってもらい自宅から音楽家の家までを往復する。
彼女はメイド用の制服を与えられる。
スカートを貸与されるのだが、スカートの下にはズボンを履いたままで、
時々ロールアップしたズボンの裾がスカートの裾のしたに落ちてくる。
こうした、生活を通じて彼女がいかにして再生していくのかを
カメラは極端なクローズアップショットを上手に使いながら
延々と記述していく。
時々、貧しい者たちの結婚式の風景が
象徴的に何度かストーリーの中に挿入される。
母親の埋葬のために海へ向かい、海へ到着したシーンが美しい。
1976年生まれの女性監督、しかも第2作なんてビックリ!