関西出身の劇団鹿殺しが結成10周年を迎えた。
本作は、その記念公演である。
スーパースターというタイトル通り、彼らのスーパースターが出てくる。
その名はブッチャ―(政岡泰志)。
彼は圧倒的な孤独感を持って少年たちの前に登場し、
そのかっこ悪いけどカッコいいヒーローを演じる。
ブッチャ―は気合が入るとおならが出る。
そんなタイプのヒーローである。
1980年生まれのピカイチ(葉月チョビ)の目を通して、この物語は始まる。
それから2010年までの約三十年間の物語が語られる。
尼崎「立花」にある団地でのお話。
その団地は1950年代に建てられたもの。
1980年代半ばに、取り壊して新たな都市計画の話があがっている。
道路の建設のための用地が必要だったから?
その決して裕福とは言えない団地に住み、
近所でうどん屋を営んでいる家族の次男がピカイチである。
自分の子供時代とシンクロする。
僕は大阪府高槻市の団地に住んでいた。
そして実家はいまも、そこにある。
そこに引っ越してきたのは1970年。
まさに万国博覧会が千里で行われた年だった。
うちも決して裕福ではなかった。
あれから40年がたった。
自分の体験とシンクロするような感じで物語は進行していく。
中学に入るとバスケットボール部に入部するピカイチ。
背の小さなピカイチは万年補欠、しかも貧乏なので、
バスケットシューズを買うことが出来ない。
でも、友達と一緒にバスケットシューズを買いに行く。
そのピカイチに出場のチャンスが回ってくる。
このシュートを入れればスーパースターになるかもしれない!
と思ってピカイチはシュートする。
ピカイチの泣く姿が哀愁を誘う。
葉月チョビの姿と声が共感を与えてくれる。
現在のピカイチは売れない漫画家志望の男である。
現在と過去のピカイチの子供時代とが交互に描かれる。
そしてピカイチは少しづつ成長していく。
ピカイチの兄はボクシングをやっている。
父親仕込みのボクシング。
兄は日本チャンピオンになり、そして世界チャンピオンとのマッチを迎える。
スーパースターになる瞬間。悲劇は起きる。
その突然の悲劇からみんなは、再生に向かってチカラ強く進んでいく。
その姿勢を見ていると心の奥の方にある何かが刺激されざわざわっと疼くのである。
その疼きはなんなのか?
そして、ここにいるすべての人たちを応援したくなる。
李が音楽監督を務め劇中には様々な唄が唄われる。
歌いながら俳優たちは踊る。
ブッチャ―は誰の中にもいる。
あれって、自分自身のヒーローの姿なのかな?
みんなの喋る関西弁がいい。