柿喰う客を一度見て、そのエネルギーに圧倒された。
情熱が「ほとばしる」と言う。
漢字で書くと「迸る」と書くみたいだが、その漢字はこんなことだったのか!
ということを身体で感じさせてくれるのがこの柿喰う客。
作・演出の中屋敷法仁は若い、20歳代を中心とした若手世代が
ストレートに「まっすぐ」なものを作っていることが興味深い。
ロスジェネ世代の屈折感が
ポーンとどこかにいってしまっているかのような感覚がここにある。
今回は短編だけの特別公演。
中屋敷が俳優に向けて書き下ろしたものだそう。
「八百長デスマッチ」は30分、そして一人芝居の「いきなりベッドシーン」は40分。
久しぶりの、タイニイアリス。新宿二丁目仲通りの真ん中地下にある劇場。
そういえば「自己批判ショー」という茨城の劇団をここで見たなあと思い出す。
以前はタイニイアリスの演劇フェスティバルなどが盛んで
20年近く前はよく通った。
そのときに、当時フジテレビで「おれたちひょうきん族」のプロデューサーだった
横澤 彪さんをお見かけした。横澤さんは1937年生まれ。
ということは僕よりも25歳先輩である。
タイニイアリスに通っていた僕が25歳とすると、
そのとき横澤さんはもう50歳になっていたんだと今になって驚く。
その後も横澤さんを、小さな劇場でときどきお見かけして、
プロデューサーとはこうして豆に足を運び様々な人に会い
才能を発見していくものだなということを傍目で見て学ばせてもらった。
最初にここで観たのは、自転車キンクリートだったように記憶している。
まだ日本女子大学のお嬢様たちが小劇場演劇を始めたばかりのころ。
ある仕事のナレーション(声優)としての仕事でたまたま、
鈴木裕美さんとご一緒する機会があり、同世代だったこともあり
話が盛り上がり、彼女の舞台を見に行くことになった。
あれから25年以上鈴木裕美さんは第1線を走り続け、
カンパニーを運営しながら演出をやるという八面六臂の活躍をされている。
もとい、柿喰う客である。
「八百長デスマッチ」は玉置玲央と村上誠基の男、二人だけの短編。
二人の掛け合いが面白いユニゾンになったり交互にずれたり
言葉のコンテンポラリーダンスとでも言うのだろうか?
この二人のためにアテガキされたというだけあって
すごくマッチしている。彼らの固定ファンがいるのだろうか?
ものすごく受けている観客がいて驚いた。
そういえば見た目もかわいいキャラで女子に人気なのもわかる気がした。
「いきなりベッドシーン」は、七味まゆ味のために2年前書き下ろされたもの。
素晴らしい舞台だった。彼女は、この舞台の40分の間喋り続け疾走し続けた。
かっこいい!言葉と言葉がつながりそこからイメージが増殖していく。
そのイメージの増殖を遮ることなく、七味の身体がそれを紡いでいく。
そのスピード感と迫力はまさに「ほとばしる」という言葉そのままで、
汗もツバキも彼女の身体までも迸っていく。
ある高校の入学の日から卒業式までのことを語りつつ、
京都への修学旅行のエピソードが挿入される。
時間軸は自由に変化する。
その自由さを七味はしっかりと受け止めてかたちにする。
魅力的な俳優が演じきった40分はまさにカンドー、ソーゾー以上のカンドー、
そうカンドーだった。
とこの戯曲をまねた形で最後の部分を書いてみた。