「夢をつかまネバダ」というダジャレの副題の裏にあるのは、
この映画が優れた音楽劇であるということ。
歌のあるシーンはどれも印象深く、音楽が好きな人たちが
作っているんだなと素直に感じることが出来る。
オープニングはこの映画が音楽劇へと向かうプロローグであることを暗示させる。
三つの隕石が地球に飛来する。
ネバダ州のはずれにある住宅街。
ラスベガスを中心とした砂漠の街は、夢をかなえる場所でもある。
そこに大気圏を通過して地上に落下してきた小石がリズムを刻む。
リズムは繰り返され、ある音楽のイントロへと続いていく。
そしてこのハッピーエンドの夢物語が始まる。
KABAちゃんの振付になるダンスは見ていて気持ちがいい。
50年代のMGM系のミュージカルを想起させるようなシーン。
テンポよく様々なショットが積み重ねられる。
CMの演出を長年手がけてきた中島信也さんらしい贅沢なシーンである。
矢島美容室のビルボードが掲げられている一軒家に住むのが矢島美容室の三人。
とんねるずの石橋貴明、木梨憲武、そしてDJ-OZMAの三人が母親と二人の娘を演じる。
この家族の父親があるときに多額の借金を抱え失踪してしまった。
母親は借金で生計がなりたたなくなり、昔取った杵柄か、
ストリップのライブハウスで踊り子として働き始める。
長女のOZMAはこの街で主宰する美人コンテストに出場する。
小学生の石橋貴明は毎日スクールバスで通学し、
学校ではソフトボールチームで活躍している。
彼らの前にヒール役が現れる。
黒木メイサとその父親家族。「好敵手現る!」である。
まるで、星飛雄馬と花形満のような。
映画はファンタジーとしての世界を突っ走る。
ある町のおとぎ話である。
様々な物語要素が組み込まれていく。
そこを受け入れて純粋な気持ちで楽しめるかどうかが
この映画の評価を決めるポイントになる。
出演者たちはみな善人ばかりである。
どうしようもない人たちが戯画化して描かれるが
結局はみないい人たちばかり。
現実はそんなもんじゃないだろう!と思う。
当然である。
これはある種の夢の理想郷を描こうとした映画なのだ。
信じられるものが確実にある世界の物語。
「がんばれベアーズ」などの往年の米国映画を想起させる。
ラストシーンの石橋のセリフがいい。
恋愛は壊れやすいものだからその瞬間を大切にする。
そして友情は長く続くものだから多少の変化があってもびくともしない!
と語るシーンにぐっとくる。
そして、映画はハッピーエンドへの道を突き進んでいく。
いろいろあるけど、これでいいのだ!
の世界をストレートに描く。
そこを素直に受け入れることによって、この映画は愛おしくなる。
細かな技術がリアルなCGと笑えるCGとして活かされる。
笑えるCGというのが、まさにこの映画らしい。
客演の俳優さんたちがまたいい。
見ているものを驚かせてくれる。
エンドロールでは、NGシーンが流される。
まるでジャッキーチェンの映画のエンディングのように。