1月22日土曜日、寒風が吹きすさぶ渋谷の街の
小さなバーの店内が熱気で包まれた。
洞口依子を知っているだろうか?
1980年代の半ばに突然現れて、伊丹十三、黒澤清監督などの
映画に起用され一世を風靡した。
その衝撃的なデビューはいまだに記憶に残っている。
アンニュイでどこか大人びた雰囲気があるのに
若くて少女みたいなところもある。
篠山紀信が「GORO」という雑誌で彼女を撮影し
「美少女写真館」というコーナーに掲載された。
また週刊朝日の表紙を飾ったりしていた。
週刊朝日はその頃、女子大生をはじめとする
素人系の女性を撮影して毎週の表紙にしていた。
フェイスブックなどがない、このころは
いわゆる素人とプロのタレントとの境目がはっきりしており、
こうして積極的に素人を起用していくという戦略が目新しかった。
そして、その当時オールナイトフジや夕焼けにゃんにゃんという
番組が出てきて彼女たちがテレビ番組に出るようになった。
そのころから秋元康のやっていることは本質的になんら変わらない。
AKB48の台頭もいまの時代の必然だったのだろう。
時代が一巡して、こうした等身大で身近に感じる女の子たちに
自己実現の投影をし、応援する男子たち、という構図は何ら変わっていない。
この構造は海外に輸出可能なのだろうか?と思う。
唯一、大きな違いはAKBに登場している子たちは
激烈な競争原理の元きちんと訓練されたダンスや歌をベースとして
意識的にプロとして活動をしているというところ。
素人とプロの境目がシームレスになっている現在
この境界線だけはきちんと乗り越えていかなければということが良く分かる。
当時まだ10代後半だった洞口依子もアラフォーを迎えた。
彼女は30代後半に子宮頚癌となり、子宮と卵巣を全摘出する手術を行った。
その後、抗がん剤による治療を続け激しい副作用と精神の混乱と戦いながら
現場復帰することが出来た。
その壮絶なガンとの記録を彼女は「子宮会議」という本に著した。
今回は、その書籍が単行本を経て文庫本になった出版記念を兼ねて
ライブをやるというものだった。
彼女は手術後のリハビリの時期に沖縄に行って
その地で癒されココロとともに再生に向かっていったらしい。
沖縄と言う島にはそんな効果があるのかも知れない。
歴史的に本当に大変な目に遭い続けている島は、
実は奇蹟の島でもある。
洞口依子はウクレレを弾く。
それがむちゃ上手い!
びっくりした。
今回はヒカシューのメンバーにも参加してもらい、
洞口入れて5名のミュージシャンと
1名の女性ダンサーが60分余りのライブをやってくれた。
年齢層が幅広く70歳代と思われる人から20代の若者まで多彩だった。
同世代としては、「ジェニーはご機嫌斜め」がこのライブで
洞口依子のヴォーカルで聞けるとは思っても見なかった。