こういう時期に演劇公演を続けるのかどうするのか?
は本当に勇気がいる決断である。
この岩松了プロデュース公演は震災後に幕が開いた。3月16日(水)から。
今回は岩松了がキャスティングしただろうと思える
若い俳優ばかりが出ている群像劇。
彼らはこの公演のために懸命に稽古をしてきたのだろう。
公演を中止してしまえば、チケットのキャンセル料と小屋代、
スタッフへの支払いなどだけが出て行くだけになる、
という現実ももちろんある。
が、しかし、それを超えるだけの成果が本公演にはあった。
舞台は駅から離れた倉庫を利用した稽古場という設定。
この倉庫を持っている、会社の社長さんが
タダで使っていいとのこと。
そこに演出家と俳優たちが集まってくる。
チェーホフの「かもめ」を上演すべく稽古が行われている。
基本、俳優たちの名前で演じられていた。
ので、役名と俳優の名前が同じ。これはわかりやすい。
わかりにくいのはロシア人の名前。
トリゴーリン?という人に僕はいままで会ったこともない。
松本ちさが「ロシア人の名前が覚えられないんです!」
などと言うセリフに共感。
彼女は今は落ち目だがある時期を風靡したビッグな俳優青山ハルの出演と
抱き合わせで出演をさせてもらった同じ事務所のグラビアアイドル?
的な役を演じている。
それぞれのキャラクターに合った役を上手く振り分けている。
14名のキャストに会って、あてがきで
岩松さんが戯曲を紡いでいったのだろうか?
安藤聖と清水優がふたりだけで「かもめ」の舞台稽古をしているシーンから
始まる。明らかに稽古以上の何かがこの二人にはある、というような演技。
そしてそこに他の俳優さんたちが集まって来て、様々な謎が見えてくる。
チェーホフの「かもめ」の一節が語られる。
「湖のほとりにあなたみたいな若い娘がかもめのように自由で幸せに暮らしている。
ところがふとやってきた男が退屈まぎれにその娘を破滅させてしまう。
このかもめのように。」
チェーホフへの造詣の深い岩松了だからこそ出来たこの「かもめ」の翻案。
「かもめ」自身も劇作家が出て俳優が出ている構造となっているが、
その構造をこうして現代に置き換えてくれた。
しかも、この「カスケード」は暗転毎に時制がさかのぼっていく。
そして、それを見ながら最初に感じていた疑問や謎が解けてくる。
それは決して楽しい謎解きというものだけではなく、
人間関係や人の業(ごう)などが見えてくる。
「かもめ」で語られる、ふとやってきた男は、
この舞台では、この倉庫を持っている会社の社長さんとして描かれている。
彼が大人の理由でやろうとしているこの公演に
集まってくる若い俳優は純粋で健気である。
その純粋さだけが時制を戻るに従って見えてくる。
ある純化が創作の最初にはあるということを実感として感じる。
それが事情などによってどんどんと捻じ曲げられ
現実に合わせて変わってしまう。
最後のシーンは本当にさわやかな青春群像劇を見るようだった。
カスケードとは階段状になった滝という意味。
そこから数珠つなぎという意味に転用されているとあった。
27日まで。