渋谷南口からR246の歩道橋を渡って、坂を上がる。
満開の桜の下を歩く。
今はシアターNという映画館に変わったが、
以前この場所は、ユーロスペースという映画館があり良く通った。
一番通った上映会が「増村保蔵 レトロスペクティブ」
彼の作品と出会って人生観が変わった。
芸術にはそういったチカラがある。
そして、それはいつどのようなタイミングで
どれくらい深く機能していくということがわからない。
だから芸術に触れ続けているのだろう。
あの感動の感覚を常に探しているような。
この宝探しはとても、面白い。
そして、宝の片鱗が見える瞬間も面白い。
それが続けられる人の創作は、必ず一流になっていく。
桜台の坂を登りきったところにジョナサンがある。
そこを少し右に折れると新しく出来た建物、渋谷区文化総合センター大和田がある。
この大きなビルの6階に「伝承ホール」というのがある。
内幸町ホールを二回りほど大きくした会場。
天井が高い。
横浜の「にぎわい座」にも少し似ている。
このホールは落語のために作られたんじゃないだろうか?
今回から、内幸町ホールで行われていた「志らくのピン」古典落語編は
ここ「伝承ホール」に移って続けられるらしい。
客席が増えるので当日券でふらっと来たお客様にも
見ていただけるようにしたいとの配慮だそうである。
事実、この日も、たくさんの当日立ち見客がいた。
開口一番は二つ目の志ら乃「持参金」。
この噺はどれがどれやらのぐるぐるとお金が回る構造を
どうやって表現するかに尽きる。
そして志らく登場。志らくのマクラはいい。
いまなら「不謹慎」と言われるようなことを平気で語りお笑いにしてしまう。
そうするには見ている人が不謹慎なことを聞いて、笑える様に
持っていかなければならない。
そのコンテキストをどうやって作っていくのかが問われる。
マクラはそういう意味ではとても難しい。
「普段の袴」どうしようもなくくだらなくバカバカしいお話を、
そのくだらなさ満開で演じている。
コミュニケーションが不全の状態を作り出し、そこから笑いを作って行く。
志らくの真骨頂である。
この日は、この噺が勢いもあって、個人的には一番好きだった。
続いて「化物使い」これも繰り返しによって
面白さが増すという落語らしい構造の噺。
いろいろな化物が出てくるので、水木しげるの「妖怪図鑑」のようだった。
仲入り後、「百年目」いい噺である。
店では厳格で下の者に厳しい、一番番頭さんが、
店を抜けだし芸者たちと花見に行く。
そしてそこで店の旦那さんとばったり。
急いで店に戻って寝てしまう番頭さんだが、
旦那に何を言われるだろうと心配で一睡も出来ない。
翌朝、旦那が番頭さんを呼びつける。そして・・・。
という噺。
器量の深い、旦那を見ていると
リーダーとは、かくあるべきだと確信する。
桜の花の満開の時期に、そして出会いと旅立ちのこの時期に
この噺が聴けて本当に良かったと思っている。
Kさん、Mさん、Dさん、そして電話を頂いたTさん、
当日仕事で来られなかったKさん、
そして同僚だったKさん。ありがとうございました!