1999年初版刊行。いまさら、これを!
と思われる方もいるかもしれない。
しかし、いまこれを読んで本当に良かった。
こういう経営哲学のある会社で働ける人は幸せである。
3・11の東日本大震災後にヤマト運輸は
宅配の配送一つにつき10円を復興支援金として寄付すると決めた。
年間、百億円超が予想されるの支援金の決定の報道を読んで、
ヤマト運輸はどんな会社なんだろう?と改めて思った。
本書を元ニッテン・アルティの元・社長の安田孝一さんが
読んでいたことをとても良く覚えている。
安田社長は読書の好きな方だった。
そして、僕に「チョコレート・コスモス」という単行本を、
演劇が好きだろう!ということで貸していただいたりもした。
本書はどのようにして宅急便ビジネスが起こり
成立し繁栄していったかの記録でもあるが、
それを通じ創業社長の息子の二代目経営者の小倉昌男が
何を考えどのように経営の指揮を執って行ったかということが
赤裸々に描かれている。
公共心の強い倫理観の高い方である。
そしてオープンでフラットな方。
こういった経営者こそが現在的な経営者と言えるのではないだろうか?
しかも日本的にアダプテーションされている。
終身雇用を守りむやみに人を切らない。
そして持続可能な企業を目指している。
と同時に情報が開かれ公正で公平な仕組みを作ろうと努力している。
その付き合い方は幹部だけでなく、組合員へも同様。
小倉昌男は、戦前から運輸業を営んでいた
父の経営する大和運輸に1948年に入社した。
入社後23年経った1971年に社長就任、
その後、運輸業から宅配事業へと大きく方針転換し
いまや信書を除くと
郵便事業を追い越したのではないかというような勢いである。
ヤマトを真似て宅配便事業を始めた直後
その他、35社が宅配便事業に名乗りを上げたらしい。
が、現在残っているのは佐川急便だけとなった。
面白かったのが人事の評価制度である。
上司の部下に対する評価はあてにならないと小倉さんは、いう。
そこで小倉さんが考えたのが
下からの評価と横からの評価である。
そして、評価実績は「人柄」である。と規定している。
誠実であるか裏表がないか、
利己主義ではなく助け合いの気持ちがあるか、
思いやりの気持ちがあるか?
などの項目に点をつけたそうである。
また経営リーダーの条件というのがいい。
「論理的でなくてはならない。」
というのは目から鱗だった。
しかし、納得。
自分の頭で考えて論理的に結論を導き出すことが重要である、と。
それだからこそ宅配便事業に関しても確信があり、
おかしいと思える行政と、とことんやりあうことが出来たのだろう。
また、「ネアカであること」の項で語られた
元新日本製鉄の稲山会長の「ネアカ」であるとともに「謙虚」であるという言葉が印象に残った。
そして、最後に小倉さんが挙げたのが
「高い倫理感」である。
その心意気があるからこそ、今回の震災に際しての
1個10円の支援なっどがすんなりと決まっていったのだろう。
会社全体にその倫理観が浸透している。
こういうのが企業文化というのだろう。