写真家の佐藤信一さんという方がいる。1966年生まれ。
彼は宮城県「南三陸町」で二代にわたって写真館「佐良スタジオ」を営んでいた。
3・11に自宅および写真館を失った。
佐藤さんは震災直後からカメラを持ってその惨状を撮影し続けた。
彼の撮影した3・11から9・11までの半年に渡る記録が
9月27日に出版された。
それを記念してこの展示会が行われた。
発行は、ADK南三陸町復興支援プロジェクト。
発売は日本文芸社。
展示の最終日に代休を利用して駆けつけた。
階段状になった場所にその写真集で取り上げられた写真がパネルになって展示されている。
3・11から時系列になって見ていくようになっている。
最初の数枚の写真に驚いた。
3・11の15時から17時くらいにかけての写真。
ビルの屋上に多くの人が集まり、足元の大津波をみんなが見ている写真があった。
次の写真は同じアングルでその屋上にいるひとたちが濁流の中になっている写真だった。
一人か二人だけが屋上の避雷針のようなものにぶらさがっている。
後の屋上にいた人々は大きな濁流の波の下。
この後どうなったのだろう?と暫く立ちつくして想像した。
3・11から数日間こうした映像をテレビで見続けたことを思い出す。
そのときは、何故か涙が出てきてとまらない。
ちょっとしたエピソードを聞いても涙が出た。
今回のこの写真集の出版のプロジェクトも
広告会社の中から自発的にやろうと言いだした人たちが集まって
成立した案件だと伺った。
当日もその関係者の人たちが集まり、受付をされていた。
受付の二人は熱心に宅急便の伝票を書いていた。
その展示会場で佐藤信一さんのインタビューと
写真集の写真そして南三陸の現場を紹介したビデオ映像が流れていた。
この映像を作ったのはパラゴンという制作会社のディレクター雨宮恒平さん。
彼もたまたまこのタイミングで来ており、紹介していただいた。
またADKの実行委員でもある梅原さんにも会う。
彼の妻とお子さんが見に来ているに遭遇し、
とても嬉しい気持ちになった。
こうして人々がつながっていく。
自発的に集まる人々の輪がこうしたイベントを通じて目に見える形になった。
このような取り組みが行政やNPO団体だけでなく
広告の世界でも実際に行われている。
そのための第一歩が踏み出された。
このイベントはこれからフジテレビでも行われるらしい。
写真集は1500円(税別)。
この売り上げの中から300円が宮城県南三陸町に寄付されるらしい。
こうして生まれた震災後半年の記録。
これから二冊目、三冊目と続いていって欲しい。
佐藤さんの撮った写真は時にチカラ強く時に優しい。
その眼差しをプロの技術が支えており優れた作品にもなっている。
隣の「山下書店」に本書を買い求めに行ったら既に売り切れていた。