維新派の久しぶりの東京での屋外公演である。
以前、汐留が再開発される際に、
そこの空き地で行われた公演は伝説的な
公演だったとして語り継がれている。
それ以降は、大阪南港や琵琶湖、奈良、犬島などの場所で
屋外公演を行っている。
そういう意味でも今回のF/Tのこの公演は
貴重な機会を与えてくれるものだった。
西武池袋本店。1年に1回中に入るか、どうか?
しかも入るのは、地下の食料品売り場だけ。
4階に初めて上がる。
西武百貨店本店は縦に異常に長い構造を持つ。
山手線に沿って池袋駅の東側のほぼすべてが
西武百貨店であるとも言える。
延々と4階の廊下を奥まで歩くと、そこが別館への
渡り廊下のようになっている。
そこが「まつりの広場」。
足場が組んである。開場を待つ多くの人がいた。
会場内に入ると百坪から二百坪の空間だろう。
池袋から新宿の方面を見るカタチになる。
右手には山手線が走っている。
大きなJR池袋駅のターミナルが真横にある。
新宿の高層ビル群が見える。
屋上には淵に沿ってミニチュアのビルがたくさん並べられている。
それが見ている方向と同じビルのミニチュアだと気づき驚いた。
新宿の高層ビルが見える方向の屋上の縁には
都庁をはじめとするビル群のミニチュアが置かれている。
この日は天候が悪く雨の中の公演となった。
維新派を大阪で見た時は、ものすごい嵐となったのを思い出した。
その時はビニール傘をさしながら見たのか?
雨合羽を着ながら見たのか?定かではない。
が、雨の中生演奏がガンガンと流れる中見た体験だけは覚えている。
野外劇にはそういう体験を強く意識させる側面がある。
今年のF/Tも野外劇が多い。
野外劇には天候などのリスクが伴う。
それを、知った前提で敢えてリスクを冒して公演をやろうと決めることに
いつも敬意を覚える。
単なるお役所仕事ではない熱意がこれらの公演にはある。
だからファンが増え、毎回たくさんのヴォランティアスタッフが手伝ってくれている。
いつもの白塗りで白いシャツに黒の半ズボン?黒の靴。
といういで立ちの俳優たちが個性を消して声を出し動く。
あるパターン化された動きと、巧妙にサウンドデザインされた音に浸る。
さらには、そこに聞こえてくる雨の音、風の音、JRの電車が走行する音、
パトカーや救急車のサイレンの音などが混然一体となって聞こえてくる。
俳優たちは各シーンごとにテーマとなるような動きをする。
前半微妙に揺れる動きがアトランダムに繰り返される。
奥にあるミニチュアと俳優がほぼ同じ高さ。
ということは俳優は身長200メートルくらいとなるのか?
巨人と街というように見えてくる。
アトランダムに揺れるのを見ていると
地震でビルがぐらぐらと揺れるのを思い出す。
エンディングのシーンが印象的だった。
東京に向かって何かがやってくる。
その正体は何だろう?巨人のカタチをした見えない怪物なのか?
その暗喩的な配置を見て何故かそら恐ろしいものを感じた。