ピアノの調律師シュテファンを1年にわたって 追いかけたドキュメンタリー。 彼はSTEINWAY&SONSという世界で1番有名な ピアノ会社の調律師である。 フランス人の現代音楽家でありピアニストである ピエール=ロマン・エマールという柔軟剤のような 名前のアーティストがバッハの「フーガの技法」の 録音をすることとなった。 その準備が1年前から始まった。 録音されるホールはウィーンのコンツェルトハウス。 ピアノを選定するところから始まる。 何台ものピアノを弾いてみてそのピアノの持つ特徴をつかみ、 今回の録音に適切なものを選ぶ。 以前、グレングールドのドキュメンタリー映画を見た時も カナダ人のグールドがニューヨークにやってきて 何台ものピアノを弾いて録音に使うピアノを選ぶというシーンがあった。 本映画では245番のピアノが選ばれてホールに運ばれる。 そこから調律師の仕事が始まる。 エマールと打合せをしながらどんな音を彼が求めているのか? を聞きながら彼の要望に応じて丁寧に丁寧に調律をしていく。 このレベルの調律になるとギリギリのレベルをめざすのでとても難しい調律となる。 それはバランスをどこで取るのか?というようなこと。 調律のバランスをギリギリのレベルで取りだすと、 1回の演奏毎に細かい微調整が必要になってくる。 地味な映画なのかな?と思っていたら ものすごい緊張感が映画上映中持続する。 そんなドキュメンタリーだった。 エマールのCD録音の演奏に至るまでを軸に、 シュテファンの仕事が記録されている。 様々なアーティスト(ピアニスト)の要望に答えるべく 彼も様々な実験をする。トライアンドエラーの繰り返しである。 これが調律師としての経験になるのだろう。 ピアニストの弾き方、協奏するオーケストラの規模、 演奏されるホール、そしてそこでどの曲が演奏されるか? で調律の仕方が全て変わってくる。 エマールはバッハの曲なので「チェンバロ」的な音色にこだわる。 シュテファンは実際の優れたチェンバロの音を聞きに行く。 こうしたところから調律が始まるのだな! 後半の実際の演奏の直前からは ものすごくスリリングな展開が続く。 アーティストで完璧主義者であるエマールが悩む。 それに応じて協力するシュテファン。 彼らが何十年も行って来ている協働作業はいつも新鮮。 録音はその場限りなので毎回最善を尽くす。 そのやり取りがプロフェッショナルの職人の魂を感じる。 ドイツの職人をマイスターというがまさにそんな人。 芸術家と職人のレベルの高い丁丁発止が本映画最大の見どころである。 本映画は欧州の映画祭でたくさんの賞を受賞している。 音楽ドキュメントの好きな方は必見。 カメラにも工夫がみられ、こんなところにカメラが というような場所からピアノの内部を撮影していたりする。 またドイツやオーストリアの風景が時々垣間見えて、気持ちいい。 こうしたところで暮らしていると ゴミゴミした人口の多い都市で暮らすのとは 全然違う人生になるのではないかな? シュテファンが愛犬のゴールデンレトリバーを仕事場に連れて来ていた。 こうしたワークスタイルが今後日本にも定着するようになればなと思う。 1月21日よりシネマート新宿にて。
by haruharuyama
| 2012-01-21 09:40
| 映画
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