3月11日。
昨年の2時46分あなたはどこで何をしていましたか?
関東から東北にかけての人はこの質問に明確に答えることが出来るだろう。
あれから1年経った。
本日の天声人語に井上ひさしの言葉が引用されていた。
「絆」という言葉に対しての言葉。
あの日以来、何度も思ったことがある。
井上ひさしが今、生きていたら現在の状況を
何て言っているだろうと。
井上ひさし生誕77フェスティバル‘12第二弾。
井上ひさしはその生涯で60本近くの戯曲を書いている。
その戯曲がどれも素晴らしいレベルであり、
その高いレベルの戯曲を素敵な俳優たちが目の前で演じてくれる。
そんな体験が簡単に出来るのが演劇の素晴らしいところ。
なけなしのお金を、「演劇を見る」ということに注ぐ。
その体験を通じて、お金には代えられないものを受け取る。
本作は、こうした「演劇を見る」という
根源的なことを再認識させてくれた舞台だった。
井上戯曲を様々な俳優が様々な演出でいろんな劇場で上演する。
シェイクスピアやチェーホフのような古典になりうる
日本の劇作家の生誕77年のフェスティバルの一環。
死後2年経っても井上ひさしの舞台は健在。
いや、逆に今のこういう時代だからこその
演劇と言えるのではないだろうか?
見に行こうと思ったのは1通のメールだった。
Oさんから久しぶりにメールをいただき、
井上ひさしのこの舞台を見たとのことだった。
あまり演劇を見ないOさんが、これを見て
とても感動したということがメールの文章を通じて伝わってきた。
何とか時間を作って当日券で潜り込む。行って良かった。
こまつ座は年配のファンが多い。
50歳の僕などはまだまだ若造である。
若い人は逆に7350円という入場料がネックになっているのか?
(ちなみに、学生や俳優演劇養成所の人たちには学生割引料金で
5250円という価格が設定されている。)
さきほども書いたが、なけなしのお金を演劇を見ることに費やしてみよう!
食費は自炊をすれば美味しいし安い。
出掛ける時には水筒とおにぎりを持っていけばいい!
それも一つの幸せのカタチのような気がする。
劇場でSさんとバッタリ。
3月末の新国立劇場で再開の約束をする。
大衆演劇の「旅一座」のお話。
消滅寸前で看板役者が抜け、貧乏でろくに飯も食えない旅一座である。
(以下、節をつけて)
「そんな一座が雪の降る、北関東の湯の花の、旅館の小屋にやってきた。
高畑淳子が座長を務め、金内喜久夫が番頭さん、女形は村田雄浩が、
若き女優は山田まりあ、二枚目看板、今拓哉。鳴りもの務める宇宙くん。
この6人の旅一座。温泉小屋の楽屋から、人間模様が見えてくる。
人情欲望感情を、芝居がかって演じきる。何がほんとかわからない。
そんな舞台が目の前で、繰り広げられるのが、雪やこんんこんんんんん!」
(ここで拍子木がチョンチョンと!)
みたいな感じの舞台だった。
井上ひさしの書いた台詞が俳優の口から音になって語られる。
その口上の気持ちよさったら
美空ひばりの音楽にも勝るくらいの感動がある。
戯曲の台詞とは俳優の身体から発せられることによって
完全なものになるのだということを痛感した舞台だった。