作・長塚圭史、演出・河原雅彦。
長塚2001年の作品の再演と聞いた。
長塚が阿佐ヶ谷スパイダースでコツコツと
作品を発表していた頃の作品。
2004年の「はたらくおとこ」は当時の長塚の傑作として記憶に残っている。
その数年前に本作は書かれた。
何かわからない奇妙なものが街を襲い
その街が崩壊していく。
その奇妙なものは語られず、わけのわからない
違和感と恐怖感で舞台が満ちあふれていく。
その突拍子もない設定に
ついていくかどうか?でこの舞台の評価は大きく分かれるかもしれない。
閉鎖された田舎町で起こる、おどろおどろしいこと。
その街に救いのようなものはなく、
そこに住んでいる人たちはその状況をただ受け入れていくしかない。
いまも、マスメディアなどが存在しない
地域コミュニティがあればこんな状況になっていたのかな?と思う。
オウムの上九一色村などは、まさにそうしたコミュニティだったのでは?
この田舎町は、橋のない川をロープが吊るされたケーブルで移動し、
そこからトロッコに乗って延々とやってくる場所。
そんなところに実家のある男が彼女と一緒に東京から
帰ってくるところからこの舞台は始まる。
一般的にこの街を出た人は二度と戻ってこないと言われている。
その男にはよっぽどの訳があったのだ。
その理由は後に明らかになる。
ミステリーともホラーともつかぬ奇妙な後味が残る舞台。
彼の実家には姉と沼田と称する男が同棲生活をしている。
姉は「全とっかえ」という整形を施し
見た目は完璧に別人となっている。
この舞台ではこのような突拍子もない設定が頻出する。
広島という医者が彼らの整形を格安で行っている。
何人もの街の人々が整形をし、ある日彼ら整形をした人々に事件が起きる。
広島とは「NO MORE HIROSHIMA」の「広島」という意味なのか?
ヒロシマという外部からのチカラによって人々は崩れていくのか?
また、この街では「闘鶏」が行われており
「闘鶏」に勝つと負けたものに対して圧倒的に有利になる
そんな仕組みが出来ている。
そんなエピソードを交え2時間弱の舞台は進んでいく。
河原の演出は派手でわかりやすく迫力がある。
彼が鈴木聡の戯曲を演出した「斉藤幸子」は傑作だった。
野波麻帆、木南晴夏、という女優たちが魅力的。