現在「マウリッツハイス美術館展」が東京都美術館で行われている。
それを記念してなのか?青年団の不朽の名作となった
「東京ノート」の美術館での公演が久しぶりに行われた。
本公演はものすごい人気らしく、この日も当日券は5枚のみと
入口の掲示板に書かれていた。
現在行われている美術展は武井咲が出ている
TVCMなどで知っている人も多いと思うが、
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が展示されている。
この少女をCMでは武井咲が演じた。
「世界で一番有名な少女が来日します」
というような広告コピーも印象に残っている。
平日でも入場制限があり何分も待つことになると聴いた。
9月の17日まで展示されているので機会を見て行こうと思う。
この美術館は、今年の4月に新たに立てなおされた。
金曜日以外は17時半までで開館している。金曜日は20時まで。
閉館後、演劇用にロビーを開放して19時半から舞台が始まる。
入口を入って地下に降りて行き、ミュージアムショップをこえると
階段がありロビーのある場所がある。
今回はそこに舞台が設置されロビーに張り付くカタチで
客席が設置されていた。
今まで、実際の美術館を借りて
何度か「東京ノート」の公演が行われた。
僕が知っているだけで東京圏だと、横浜美術館、東京都現代美術館、
そして新国立劇場のエントランスロビースペース。
どれも広い空間で天井が高いところが多かった。
ので音が逃げてしまい俳優の台詞が聴きとりにくい時もあった。
新国立劇場の公演から特殊なマイクで台詞を拾い
特殊なスピーカーで音を増幅して流すなどの工夫がはじまった。
今回の東京都美術館は天井はそんなに高くなく
こじんまりとした環境で音響も前回のシステムが導入されており、
いままでで最高の環境の美術館公演だった。
台詞が聴きとりやすく、そして俳優が近いので演技も良くわかる。
こまばアゴラで見る時の集中力と、
その奥に大きく拡がる実際の美術館の借景がとても効果的。
ミュージアムショップが上手に見え、照明が均等にならんでおり
展示されている実際の美術品もある。
しかも、今は、フェルメールが実際に飾られている。
本作の戯曲は、フェルメールなどを展示している美術展にやって来た
という設定となっているのだ。
東京ノートは2024年の東京が舞台となっている。
欧州で戦争が始まって、フェルメールなどの絵画が
戦地から避難するという形で東京に保管されているという設定。
日本も平和維持活動に参加してPKOに日本人の有志が参加している。
そんな中、田舎からお姉さんがやってくる。
彼女の義理の妹がお姉さんに付き添い東京見物をする。
小津安二郎の「東京物語」をモチーフとした設定が活きている。
静かな美術館なのにざわざわした世界が聞こえてくる。
毎回、東京ノートには発見がある。
今回、思ったのは男が実家のある福島に帰って農業を始めようか!
というシーン。
2011年3月以降にこの台詞の持つ意味は変わった。
今から12年後。福島はどうなっているのだろうか?
また、この戯曲は、実は優れた芸術論でもあるのだな!
ということが伝わってきた。
物を見るということ、3次元のものを2次元に定着する際に出る事象、
レンズを通してものを見るということ、
そして絵画にする時にどのようにフレーミングし何を省略するのか?
などなどの言葉が台詞の中にいっぱいつまっている。
見れば見るほどいろいろなものがじわっとしみだしてくる
奥の深い舞台である。
25日まで。