本作の初演は1991年、再演が14年前の1998年。
それから14年ぶりの再演となる怪作。
頭部肥大の子どもが「ふくすけ」という人形に似ている
ことから名付けられただろうこの題名。
松尾スズキの著書の表紙にもそのような絵が描かれており
印象に残っていた。
大人計画はチケットがなかなかとれないので、
なかなか観に行くことが出来ない。
本作の初演、再演ともに観ることが出来なかった。
初「ふくすけ」の感想は、
人間の心の奥の闇に光をあてようとして
グダグダになっていく物語とでも言えるだろうか?
決して、明るい夢物語ではない
現実の暗部をブラックなユーモアを交えて描いてゆく。
大人計画らしいと言えば、まさに大人計画らしい舞台。
しかも、ここでは舞台でないと決して表現できないことが行われている。
身体を強く意識させ、そこからなんだかわけのわからない印象が立ち昇ってくる。
その印象が積み重なりイメージのコラージュを紡ぎだす。
畸形児の集団、売春婦、歌舞伎町で風俗を仕切る女帝、
目の見えない妻と、そのひもの情夫、
レズビアンのカップルなどなど。
社会の闇の中でなんとかかんとか生きている人々に
松尾は敢えて光をあてようとする。
観てはいけないものとして、隠されてきた
そうしたものたちをストレートに出し、
観客の目の前に呈示することによって、
独特の化学変化が起きるだろうことを予想して。
こうした舞台がメジャーな俳優によって
コクーンで上演されることに驚き、こうした流れが
舞台芸術をさらなる高みに押し上げてくれるかもしれないな!と期待する。
大人計画は名優「阿部サダヲ」の存在がとても大きいだろう。
この日も彼のファンと思われる女性ファンがたくさん来ていた。
もはや、立派なタレント?である。
小劇場の俳優以上の何かが、これだけの観客を集めることが出来る。
また客演陣も豪華だ!九州の田舎町で夫婦を営んでいた
吃音症の男(古田新太)とその妻(大竹しのぶ)、
妻が男のもとから失踪し、東京にいることがわかる。
夫の古田新太は妻を探して東京に行く。
役作りか?ものすごく身体を絞って体重を落とした古田がとてもよかった。
髪型を横分けにしどこかさみしそうな顔で、
吃音を気にしながら真面目に生きようとしている男を好演する。
古田は東京で、売春をしているフタバ(多部未華子)に出会う。
オジサンとこの少女はそれから一緒に妻を探し始める。
妻の大竹しのぶは歌舞伎町で風俗を牛耳る女帝となった。
様々な風俗のアイデアが当たり、どんどんと拡大していく。
その後、大竹は風俗産業に働く者の権利を守るべく、
都知事選に立候補する。
並行して、目の見えない妻(平岩紙)とそのヒモの男の関係が描かれる。
畸形児のふくすけ(阿部サダヲ)が見世物興業に出演するようになり
(「エレファントマン」みたいな)その後、
彼は心の闇を抱えたものたちのカリスマになっていく。
ふくすけは、新興宗教の教祖となり、その伝道師として
目の見えない平岩紙とその情夫が現場を仕切る。
これらの関係が並行して語られ、最後にはすべての要素が収束していく。
ものすごい情報量をめまぐるしいテンポで描く。
最後は古田と大竹の夫婦の秘密が暴露される。
最後の晩餐のようなエンディングだった。
人間の根源の倫理観みたいなものがあぶりだされ、試される3時間弱の舞台。
多部ちゃんの体当たりの演技に感心。
彼女の所属事務所のふところも深い!
9月2日まで。