大阪の万博記念公演に大きなオブジェがある。「太陽の塔」。
1970年の大阪万博の時にそれは建てられ、あれから42年が経過した。
その「太陽の塔」を作ったのが美術家の岡本太郎。
「芸術は爆発だ!」
という岡本太郎の出ているTVCMが話題になり、
その極端な風貌と言動で時のひととなった。
岡本太郎記念館が東京の青山にある。
岡本の住んでいた屋敷の土地を利用したものか?
本作は、その岡本太郎の母親「岡本かの子」の評伝劇である。
題名の「エゲリア」というのはイタリアの古い伝説に登場する
ヌマ王の妻「永遠に青春の女」のことを言うらしい。
本作は、永遠に青春をし続けた激しくも愛くるしい女、
岡本かの子の半生を描いたものである。
脚本は瀬戸口都、2005年に本作はドラマリーディングが行われたらしい。
それから7年が経ち、文学座本公演として上演されることとなった。
演出は西川信廣。
岡本太郎の著書にもあったように、
母親の岡本かの子はとにかく激しい人だったらしい。
家事の類は一切やらず、若き頃から和歌を詠み、
人生の後半には小説を書き始める。
芸術家として一本筋が通り、その破天荒な性格とふるまいに
周囲の男たちは振り回されながらも付き合い続ける。
岡本かの子の純粋性が彼らの協力を許したのだろう。
芸術にひたむきに向き合う。
「純粋」なものにひたすら向き合う岡本かの子の姿は激しくも美しい。
岡本太郎はそういった環境で育てられ芸術家となった。
岡本太郎の極端な発言は、そうした家庭環境から来ているのだな!
と合点がいった。
吉祥寺シアターに設置された回り舞台がとても効果的に使われている。
混沌とした状況などが舞台がくるくると回ることによって
感覚的に伝わってくる。
舞台は、岡本太郎とその父親の岡本一平が神戸の六甲山ホテルで
酒を酌み交わすところから始まる。
それは、かの子が亡くなった後、二人で再開するという状況を描いた場面。
そして、舞台は一転、かの子が創作活動をしている岡本家に移る。
太郎は紐で柱にくくられ放置されている。
その横でかの子はけんめいに創作活動を行っている。
いまで言うと幼児虐待にあたるようなことだが、
このエピソードは岡本太郎も著書の中で書いていた。
岡本かの子の言葉にこんなのがあるらしい。
パンフレットから引用する。
「釈迦も観音様も美貌だったから手を合わせた」
「わたしは三つの瘤(宗教・小説・歌)を持つ駱駝だ」
「わたしが男に生まれたら姦通罪はあらゆる反対を斥けてでも撤廃する」
と。この言葉通りのかの子の生活が、描かれる。
かの子に振り回される何人もの男たち。
夫の岡本一平はかの子が、好きになった男と一平との同居を許し、
彼らはみんな一緒に集まってご飯を食べる。
こ、これは、あたらしい家族のスタイルでないか?
とすら思う。
古代史を勉強している男、そして慶応病院の医師などなどが一緒に住み、
一平も含めて生活をする。
みな、何故か慶応に縁があるというのも興味深い。
そして、彼らは戦前のあの時代に3年間も海外に行って過ごすことを選択する。
それまで蓄えたものをそこで一切合切使ってしまうのだ。
芸術のためなら、そうしよう!という
かの子の熱い思いに男たちは付き合っていく。
激しくも熱い評伝劇の傑作が誕生した。
かの子を演じるのは、吉野実紗。岡本一平は大滝寛。
また成松恭夫を演じた栗野史浩がいい。
彼を見ていて、同じ文学座の角野卓造を思い出した。
23日まで。