ビリーワイルダーの最高傑作とも言われる本作が、
TOHOシネマズで行われている「午前十時の映画祭」で上映された。
この映画祭、今回で3回目となるらしい。
優れた映画ばかりが上映されており決してはずれがない。
しかもニュープリントで、劇場で見られる。
入場料も1000円に抑えられており、
終映後、どこかでお昼ごはんがまた食べられる。
代休をとった朝、日比谷に向かう。
10時からなので、近くの「ファーストキッチン」で朝ごはんを食べる。
ベーコンエッグバーガーとアイスカフェラテのMサイズ(440円)。
この日は、「踊る大捜査線」の公開初日。
関係スタッフがイベントの準備をしている。
宝塚劇場前にはいつものように宝塚の俳優たちの
入り待ちをしているファンたちの人垣があった。
この東宝村とも言えるエリアは独特である。
本作の原題は「Witness for the Prosecution」という。
「検察側の証人」という邦訳があり、舞台ではこちらの題名が使われている。
当時の映画配給の担当者がこの「情婦」という題名にしたのか?
タイロン・パワーが金持ちの未亡人殺しの被告となり、
その弁護を担当する法廷弁護士の視点でこの映画は描かれる。
大きくは弁護士事務所と法廷がその舞台となっている。
ニュープリントなのでとても見やすく
当時のモノクロ映画の撮影の質の高さを感じる。
そして、さらに驚くのはセットの豪華さである。
短いショットの部分でも丁寧にセットが作り込まれている。
1950年代の映画の豊饒さに感動。
心臓に障害を抱えた法廷弁護士のところに
タイロン・パワーが弁護の依頼に来る。
弁護士は医師や看護師の忠告を無視しながら、本案件を引き受ける。
医者に止められている葉巻とアルコールを隠れて摂取しながら。
タイロン・パワーの妻が当時56歳!だったマレーネ・デートリッヒ!
そんな年とは知らなかった。
観終わって、本作について調べていたら
そういうエピソードが書かれてあり、だまされた!と思った。
そして本作はその「だまされた!」が満載の映画でもある。
映画のエンドロールのところでナレーションが入る。
本作の結末を決してこの映画を見ていない人には喋らないように。と。
以前、聞いたのだが、向田邦子の脚本の台詞には
何ら「ほんとうのこと」は描かれていないという。
「ほんとうのこと」は言外にあり、それは決して言葉にし
て語られることはない、と。
平田オリザの戯曲にもそうしたものを感じる。
そして、その言葉が本作を見終わって思い出された。
どんでん返しにつぐどんでんがえし。
本作は決して楽しく終わる映画ではない。
人間の悲劇性みたいなものを見つめて終わる映画。
ビリーワイルダーのロマンチックコメディとは
対極にあるような映画であり、
そして本当に傑作映画だった。