いきなりの素晴らしいコーラスから始まる。
美しくもおかしい唄を聞いて、そのままこの劇世界に突入する。
大人のための!とは良く言った。
成熟した大人の人たちに是非見て欲しいオムニバス短編集。
出演者に「城山羊の会」や「ハイバイ」でおなじみの俳優たちがいるので、
そちら方面の演劇が好きな人にはとても魅力的な劇団だろう。
俳優たちのかなりの体当たりの演技が、強い舞台になった。
それも俳優の永井若葉が主宰の一人であったり
同じく俳優の岡部たかしが演出をしていることと無縁ではないだろう。
何人かの作家の戯曲が5作上演される。
まずは、永井自身が戯曲を書いた「流れる」。
人に説得されるままな永井若葉という役を永井自身が演じる。
「冬のロープウェイ」はふじきみつ彦の手になるもの。
独特の笑いの間が流れる。
この間のある戯曲というのが、ふじきらしいのかなあ?
と彼の別の戯曲「冬の焚き火」とともに思った。
岸田國士の「屋上庭園」を彷彿とさせる。
現在の様子が微妙な会話からあぶり出される。
「ワカバの話」はハイバイの岩井秀人と平原テツの共作。
何と風俗で働くことになった永井若葉と
風俗に初めて来た男性客という設定。
永井若葉の体当たりの演技は続く。
「冬の焚き火」はふじきの「間」がとても良く活かされたものとなった。
産婦人科医を訪ねる、岡部たかしと清水葉月。
産婦人科医(岩谷健司)が庭で焚き火をし焼き芋を焼いている。
そこで、ある秘密が告白されることで奇妙な変化を起こし始める。
清水葉月が蒼井優に似ているなあと思いながら見た。
そして圧巻だったのが「気立てのいいワンさん」。
城山羊の会の山内ケンジの手になる戯曲は、
城山羊の会でいままで、やられていなかった
激しく政治的なものだった。
とても、激しいシーンから始まる。
ここは女衒のいる娼館。
時代は現代なのだが戦争が行われている。
そこに客としてやってくる兵士たち。
さらに、そこに岡部たかしがやってくるのだが…。
何が正解で何が正義かわからない時代に
強烈なクサビをうちこむかのような戯曲だった。
この戯曲、今後の城山羊の会の方向性を示すのか?
とにかくものすごく濃密で興味深い短編集なことは確か。
20日まで。