今ごろになって、この撮り溜めていたドラマ全10話を一気見した。
是枝監督が震災後に祈りを込めて制作した佳作である。
放送当時視聴率がふるわず、話題になったが、
いやいやものすごくよく出来ている、
視聴質に換算したら視聴率の5倍くらいすごい効果なんじゃないだろうか?
これは最早映画である。
丁寧に書かれた脚本を素晴らしいキャストが演じ、
丁寧に丁寧に撮影されている。
是枝映画のスタッフたちが手を抜かずに作っていることがよくわかる。
そして、主演の阿部寛の職業がCM制作会社のプロデューサーというのもいい。
阿部寛は45歳のベテランCMプロデューサーを演じた。
中年男の哀しみと生きがいが表現されており人ごとで済ませることは出来なかった。
妻の山口智子はクッキングスタイリストの仕事をしている。
実際、本作のクッキングスタイリストは飯島奈美さんがやられている。
料理のシーンが毎回出てくるのだが、
撮影の山崎さんの料理を取るショットが素晴らしい。
ちなみに撮影機材はシネマイオスC-100だそう。
作り手の顔のアップと料理のクローズアップが
交互に出てくるという編集がなされているのだが、
作り手の顔がきちんと見えているものをいただく
という原初的な感覚がここにはある。
この原初的な感覚を是枝監督は仕事の仕方や生き方にまで敷衍する。
人が丁寧に作ったものをその人のぬくもりを感じてありがたくいただく。
これって、この感覚って
この「ゴーイング マイホーム」そのものではないだろうか?
スタッフの大変な努力が映像の中に結集した。
想いが決してそのまま映像として出るわけではない。
このことは、山口智子がそのような台詞を劇中でも言っている。
是枝監督の言葉なのかも知れない。
阿部寛の父が長野県で倒れて、長野の病院に入院することから、
阿部と山口の家族関係が少しずつ変化していく。
いきなりドラマチックなことは起きない。
是枝さんの映画「あるいても、あるいても」に似たトーン。
お見舞いに行く、阿部と姉のYOUとその夫、
そして阿部の母親(吉行和子)。
そこに、もう一つの視点が入る。
阿部の娘の視点(蒔田彩珠)。
小学校4年生の女の子は同級生が亡くなった喪失感をぬぐえないでいる。
その痛みが、女の子が長野の里山でいろんなことを経験することで薄れていく。
阿部の父親の小学校からの同級生が、長野の生まれ故郷で歯科医院をやっている。
西田敏行!
そして、その歯科医院では「小人伝説」をもとにした
「クーナ」について研究調査する事務局が同居している。
それを運営しているのが娘の宮﨑あおいである。
彼女には小学生の男の子がいる。
夫は数年前に突然姿を消したらしい。
これらの関係が淡々とリアリティを持って描かれる。
家族の会話のシーンなどはまさに普通の家族じゃないか?
という演出!どうやって演出するんだろう?
というぐらい自然でリアル!
YOUの存在は大きいだろうなあ?
とにかく傑作です。
見た後とても優しい気持ちになれました。