石川寛監督第3作。宮﨑あおい主演は「好きだ、」に続いて2作目である。
この映画のことが、とても好きな生徒がいて、日曜日の朝、
特別上映がありその後ティーチインという形のイベントがあると教えてくれた。
彼も見に行くというので日曜日、早目に家を出て新宿武蔵野館に向かった。
会場は多くのファンが集まっており120人のキャパの劇場だったが、
僕のもらった整理券番号は108番!
一番前の方しか空いてないかも?と思ったら、
一番前は宮﨑あおいファンでいっぱいだった!
逆に後ろの方が空いているという状況。
90分の映画はとてもシンプルな構成。
そこから描き出されるほのかで柔らかいものを
どれだけ掬い取れるかが石川監督の映画を見るのには重要。
繊細な少女漫画の断片をみるような世界が拡がる。
石川寛監督の画のトーンというものが確かにある。
淡くて白っぽい光を背景にし女優たちがその中にいる。
女優たちが着ている洋服は中間色なので風景に溶け込む。
そうした構図の中で少し暗部になった女優たちの表情や仕草に注力する。
こういうトーン。
その世界観が最後まで続くので見ていて気持ちがいい。
「やさしさに包まれたなら」というユーミンの曲の中の歌詞があるが
まさにそのような感じ、
そしてユーミンの「ひこうき雲」的な物語性と
「ベルベットイースター」的な情景描写がここにある。
宮﨑の友人、安藤サクラと一緒に車を借りて青森の病院に入院している友人の
吹石一恵を見舞に行くというもの。
そこに忽那汐里が絡む。
忽那が宮﨑の勤める、図書館に本を借りに来る。
その後、ある小さな事件が駅のホームで起きる。
その縁で忽那は宮﨑や安藤と一緒に青森の病院まで行くことになる。
吹石は2011年の3月11日に青森の海岸で被災する。
そのときの後遺症で入院しているのかどうかは語られない。
が、でこぼこになった海の桟橋が無言のまま、当時の様子を語る。
静かな静かな映画である。台詞が少ない。
ときどきボソボソっと語るだけ。
しかし、その台詞のひとつひとつが優しさと想いやりに満ちている。
人はどうしたらこんなに優しくなれるのか?と思った。
そうして、この映画は、そのことを大声で語らないまま唐突に終わる。
終映後、宮﨑あおいと石川監督が出て来てのティーチイン。
質問者の目をしっかり見て応える宮﨑さん。
そして真摯に撮影時のエピソードを語る石川さん。
こうした人たちが作っているからこんな映画になったのか!
と静かに納得。
終映後、生徒と「青葉」のラーメン。