半藤一利と宮﨑駿の対談本。
宮﨑駿が対談したいと思ったのが、日本の近代現代史を書き続けている半藤さんだった。
半藤さんには該博な昭和史の知識がある。
しかし、宮崎映画は2本しか見ていないのですがそんな私が対談相手でいいのですか?
という問いがあったのだが、宮﨑さんは、是非にということで対談が実現したそうである。
二人の対談はNHKでも番組として放送されたのでご覧にならえた方も多いだろう。
僕もHDDに録画していたのだが、
HDDの調子が悪くなり、結局初期化することとなり見ることができなかった。
とはいえ、本書を読んでじっくりと十分に二人のお話を伺うことができたので大満足。
たわいもないよしなしごとが
二人の間でかわされるだけなのだがそれがめっぽう面白い。
80年以上と70年以上生きてきた人の中には多くのものが詰まっているのだな!
と感心しきり。
最初、二人は夏目漱石の小説「草枕」が好きだという話で盛り上がる。
彼の天才性とそして晩年の小説についての閉そく性を語る。
そんなところから始まり、いくつもの戦争を経て太平洋戦争についてが語られる
。隅田川の護岸が戦前ははコンクリートでブロックされてなく
だだだだっと拡がっていたという話は興味深かった。
宮﨑さんが隅田川のその当時の様子をアニメーションにしようとしたのだが
どうもいい絵にならず断念したという話。
隅田川で船に乗っていると東に筑波山、西には富士山が見えるだけだったという話
は聞いていてとても納得。
関東平野の広さを感じるお話である。
高層建築のない広い空のあった東京の話である。
戦前戦後の当時の話とかが出てきており、そのことを
同年代に近いひとたちが話しているのはとても興味深い。
そして、この時期なので当然、宮﨑さんの映画「風立ちぬ」の話も出て来る。
この対談は半藤さんが「風立ちぬ」を見る前と、見た後との2回行われており
前篇と後編みたいな構成となっている。
映画の登場人物である堀越二郎と堀辰男などの話も出て
映画「風立ちぬ」を補完する読み物としてもいい。
以前、宮﨑駿が司馬遼太郎と堀田善衛と鼎談した本があった。
「時代の風音」というものだが、本書はそれを継ぐようなもの。
これが文春ジブリ文庫として600円以下で購入し読めるのだから、
本というものはいかにお得かがわかるというものだ。
対談の文章がとても読みやすい。