この題名「きよくやわく」と読む。漫画家いくえみ綾の原作。
いくえみ綾と言えば日本の少女漫画界を代表する漫画家の一人。
本作は2009年講談社漫画賞を受賞している。
集英社のマーガレットなどでずーっと連載をしていた。
妹がずいぶん長く別冊マーガレットなどを買っていたので
少女漫画は小学生の頃から読んでいた。
少年漫画とはまた別のジャンルである。
少女漫画特有のストリーテリングはとても文学的であり内省的でもある。
恋愛というものを様々なパターンで描き続ける。
その恋愛の「きゅんきゅん」とした世界が、この映画でもうまく描かれている。
子供の頃の事故でトラウマを負った男女が出会い、
そのトラウマを克服して、二人が恋するというストーリー。
これをドラマ出身の新城毅彦監督が丁寧に演出をしている。
本作を見るきっかけは
この映画の撮影監督が東北新社PLUSのカメラマン小宮山充さんだということ。
小宮山さんは、映像テクノアカデミアでカメラマンの役割について
毎年講義をしていただき、修了制作での撮影のお手伝いをしていただいている。
実は、昨年の2月から3月にかけての修了制作は小宮山さんの参加が出来なかった。
その理由が、この映画「潔く柔く」の撮影に入っていたから。
そしてあれから半年以上たって完成。
本作はRED EPICというカメラで撮影されている。
くっきりと良く見える。特にナイトシーンのくっきりさには驚いた。
また昼間の東京のひき画にも驚く。
冬季で乾燥していたというのもあるだろうが、隅々までくっきり。
そして人物の部分はやわらかく被写界深度が浅い絵が美しい。
移動撮影も多く、ラストショットの移動のショットは圧巻。
また長澤まさみが全力疾走するシーンがあるのだが
良くあんな撮影ができたなと感心する。
高校時代の地方都市の商店街で長澤と彼女の友人の女の子(波瑠)が
歩くシーンのクレーンワークが印象に残っている。
撮影技法だけでなく、ストーリーも骨格がしっかりしている。
身内の突然の死に接した者たちはその人を愛していればいるほど、
自分が死なせてしまったのではないか?自分だけ生きてていいのだろうか?
と自分を責める。
この映画でも登場人物たちが身近な人たちの死を克服するまでの過程が
丁寧に描かれている。
だからこそ、岡田将生と長澤まさみの恋物語が輝く。
長澤まさみが等身大の女の子をのびのびと演じている。
そして岡田との掛け合いが小気味いい。
なんだか懐かしくもさわやかな気持ちになる映画だった。
個人的に印象に残っていたのは田澤湖の近くで池脇千鶴が妹の死を忘れらず
「私だけ生きてていいのかなあ?」
と言ったシーン。
井上ひさしの戯曲を映画化した「父と暮らせば」(黒木和雄監督)に登場した
宮沢りえの台詞をなぜか思い出す。