初日観劇。松井孝治、元民主党の参議院議員がいらしていた。
松井さんは先日議員を辞職した。前回の参院選だった。
組織を離れてもこうして個人として、平田オリザや青年団と交流を持ち続ける。
そういう関係が続くのっていいなあと思って平田さんと松井さんが話しているのを拝見していた。
1階のロビーには平田オリザの最新著作「新しい広場をつくる」が売られていた。
早速購入。
本作は、平田さんが桜美林大学で演劇を教養教育(リベラルアーツ)として教えるという
過程の中で書かれたもの。
大学2年生のいわゆる一般過程の
修了公演みたいな形で桜美林大学の生徒に向けて書かれた。
登場人物は22人!初演は2003年。
桜美林大学での当時の上演はとても話題になったことを覚えている。
しかし、都内からロケーションが遠く、当時は見に行くことが出来なかった。
その作品が、青年団の俳優たちによって青年団本公演として上演されることになった。
ここには様々な日本の持つ問題が込められている。
2020年代の近未来の設定。あと十数年後?
架空の海外青年協力隊の訓練所がこの舞台となっている。
地方の村のとある場所。
そこでJICAが運営する海外青年協力隊を海外に派遣するための
3か月の訓練が行われている。
若者たちの年齢は20歳から39歳まで。
いろんな職業の人がいる。道路工事や自動車整備から看護士、
芸術などを教える訓練生などが寮生活を送っている。
実際の青年海外協力隊の実態ととても近いと
アフタートークで大西健丞さんがおっしゃっていた。
大西さんは、公益社団法人CivicForce代表理事で
NPO法人ピースウィンズ・ジャパンの代表理事でもある方。
独自に組織した集団で被災地支援や難民支援の活動を行われている。
平田さん自身も本作を書いた頃に青年海外協力隊の制度改革のための
諮問委員をされていたらしく、その時に見た二本松や駒ケ根の訓練所、
そしてモロッコなどの現地の協力隊の活動などを見たことがベースとなっている。
青年海外協力隊に行きたいなあ!と思うことが以前あったなあ、と思い出した。
そんなときはたいてい今の自分の仕事に悩んだり、
辞めようかなと思ったりしたときだった。
そういうときに、選択肢の中の一つとして
こうした生き方に魅かれる自分が確かにいた。
結局は実行に移さなかったが、
こうした2年間限定の協力隊のヴォランティアに参加しようとする
若者たちのいまどきの心情はどんなものなかのか?と想像した。
また、様々な理由で海外の途上国と言われるところに向けて国際貢献活動を行っている
この団体と仕組みにはいくつもの問題があることも描かれる。
しかし、その問題を抱えながらも
候補生を受け入れ運営し続けなければいけないというのも組織が抱えている
ジレンマでもある。
その中で職員たちや研修候補生たちは今を生きる。
その数時間の断面が描かれる。
10年前に書かれた近未来の戯曲が現実味を帯びつつある。
米の減反政策が実施されブランド米以外は
すべて輸入米とか国際交流基金はなくなり、この時代には国力を失った
日本の青年海外協力隊も今回の派遣で終了するなどの話が
リアリティを帯びて来ている。
志賀廣太郎演じる副所長が自身の沖縄での経験を、
モンゴルでのキノコ隊員として赴任する森山貴邦に語るくだりが
ココロに沁みた。
上演時間2時間の傑作。18日まで。