正式なこのお笑いライブのタイトルは
「1時間ぶっ続け漫才に挑戦‼【ヴェートーベン60分漫才‼】」
というもの。仕事でヴェートーベンの二人とご一緒する機会があり、
年末で時間もあることなので行ってみた。
渋谷東急本店の車寄せの角をハンズの方に入ったすぐの雑居ビルの8階。
漫才って長く見てても十数分。1分や3分のものも多い中
こうして60分ノンストップで漫才をやるというのに驚いた。
ヴェートーベンは結成して15年だという。
30代から40代の男性に固定ファンがおり、
10年以上通い続けているお客さんもいると聴いた。
その証拠に彼らの芸の実力は高く、
浅草などの演芸場に立ち続けている息の長いベテランにも似た風格がある。
とにかく見ていて安心して笑える。
これはお笑いという芸(技能)に対する基本がしっかりしているから。
新人芸人はこれが出来ていない人が多い。
勢いだけで一瞬のブームを生むことはあるがその後が続かない。
そうすると多くの今はいずこに?という芸人さんのように
消費され一過性のブームに終わってしまう。
猿岩石の有吉などは、それとは真逆の方向から再生した稀有な例。
でも、そんな人はそう多くない。
芸人として長くやることで生まれてくることが必ずある。
そしてこうしてライブをやり続けていることで
ヴィヴィッドな観客の反応などを感じながらやることは
とても大切だと彼ら自身も思っているのだろう。
ビートたけしさんも浅草での経験が役に立っていると
いつもおっしゃっている。
さて、ヴェートーベンのライブ、まずは前座の方が登場する、
サングラスをかけた痩せた男性。名前は忘れた。
椅子を追加で入れるというので持ち時間が長くなった。
その時に何を言えるのか?というのもエンタメビジネスとしては
凄く大切なのでは?ということを考えた。
そして、ヴェートーベンの二人の登場。
枕から始まって、徐々にヒートアップしていくのだが。
枕の前座の方のいじり方について考えた。
落語の前座の後の真打さんがどのように話すのか?
ということと比較しながら。
そこには、観客と同じ目線でヴェートーベンが語る!という
批評性がないと共感はない!
そこはアドリブで勝負のところなんだろうなああ!と思った。
売れている噺家さんのマクラは場の状況に読みながら語る。
そのとても優れた部分が青井さんが「あまちゃん」のTシャツを着た
観客をいじっているところで拝見できた。
10年来という男性ファンが最前列に座っており、
その人をいじるのがとても面白い。
その人に対して怒りながら、実は自分に向けて怒っているという高度な笑い。
それが何度も繰り返されることによって独特のグルーヴ感が出て来る。
そのお客さんへの愛情とともになぜか感動する。
後半、広島県出身のヴェートーベンらしい、広島のヤンキーの話、
そして何故か今、羽賀健二ネタが満載の毒の強い漫才、
青井さんが政治家になるという話、
さらにはアニソンや歌謡曲に青井さんが独特の合いの手を入れて
違う意味の唄にしてしまうというもの。
後半部の久保さんのつっこみと青井さんのボケのタイミングが絶妙で
テンポがとても速い!ものすごく知的好奇心を刺激するライブだった。
立川志らくさんや柳家喬太郎師匠の独演会に来るような観客ならば
確実に面白がれるのでは?
知的レベルの高い毒舌のお笑いをもっと極めていってくれるといいなあと思った。
そのためにはライブでしか絶対やれないネタをもっともっと開発して欲しいと願いつつ、
年末の最後のエンタメ鑑賞が終わった。