女性7人が登場する、今までの東京タンバリンとは違った趣向の舞台。
ただし、高井浩子の美意識は揺るがない。
きれいでカラフルな衣装、そして現代アートとも見える舞台美術。
小道具や家具の下に台車がつけられて舞台上を滑るように移動する仕組みなどは、
東京タンバリンらしいもの。
場面転換に流されるスタイリッシュでクールな音楽も同様。
そのクールで洒落た世界観に、今回は不条理的なギャグを散らばせる。
高井浩子の新たな挑戦だろうか?
実験的な試みだけに、難しい試行錯誤もあったのだろう。
いくつか面白いシーンがあり、観客席の所々で笑いが起きていた。
今年の横浜トリエンナーレの芸術ディレクターは現代美術家の森村泰昌。
森村さんは自らがいろんな人物に扮して写真を撮るという、独特な世界を築いている方。
彼が今回招聘したアーティストの代表的な作品にゴミでおおきな空間を埋めたものがあると聴いた。
それが会場に入ってすぐの代表的な作品になると言う。
その新聞記事をこの舞台を見て思い出した。
ゴミの袋がある構成を伴うとアートになるんだ!と。
また、ある種、やなぎみわの舞台にも似た現代アートのにおいがす
る不条理コメディ笑劇とでも言う方向もあるのではないか?
いままで誰もやってみなかっただろう世界に
たどり着こうとしている。
そしてこの試みは決して無駄にはならない。
内田淳子がああしたコミカルな演技をするのを見るのも貴重な体験。
コメディエンヌとして最も笑いをとっていたのは背の高い女優の宮下今日子。
彼女はお嬢様で俳優志望。でも極度の緊張しいで、人前で喋ると妙な癖が出る。
「マクベス」の一部などをやるのだが、それが…。
宮下がカフェのウェイトレスをアルバイトで行っているシーンが印象に残った。
人をいい気持ちにさせるのは、結局人でしかなく、
人の創造の営みによってそれはどの方向にも開かれる。
そして本作はこの創造性をこれまでなかったような方向性に
開いてみようとする高井浩子の大きな実験でもあった。
19日まで。