サイバーエージェントの歴史とでも言うべき本書は、
藤田さんの親友でもあり名アドバイザーでもある名編集者、
見城徹率いる幻冬舎から出版されている。
見城さんと藤田さんの2冊の著書もとても面白い。
題名は「憂鬱でなければ、仕事じゃない 」
そして
「人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない」
それらを読んで藤田さんの人柄と経営者としての姿に興味を持っていたので
本書も読んでみた。
藤田さんがサイバーエージェントを起業して上場し
幾多の苦難を経験しながら長い困難を乗り越えて今に至っている。
まさにその藤田さんの生きざまを素直に隠すところなく伝えてくれている。
良く起業家が自ら書いた本で、自分の成功譚や自慢話だけを
つづったものが出版されているが、ああいった本は完全に興ざめ本。
長く人生を生きていると絶対に順風満帆な人生などというものはないことは自明である。
真っ向から問題に向き合って逃げず何とかしてその状況を打破しながら
前へ進んでいこうという姿勢が人々の気持ちを動かし
ひいてはプロジェクトそのものや企業そのものを引っ張っていく。
そのためには多くの失敗があり、その中から何かをつかみ、
じーっと我慢もしながらも少しずつ前へ前へ進んでいける。
それが真摯に仕事をしながら生きていくことなんじゃないの?
ということを藤田さんは自らの体験をもって
私たちに教えてくれている。
まだ40歳そこそこの藤田さんがそうした境地に立っているのに驚くとともに、
良くここまで、進んでこられたなという賞賛の気持ちを持った。
広告代理業から新たなコンテンツメディア産業に変貌していく
四苦八苦の試みがここで描かれる。
まさに2000年代初頭からの十年少しの歴史である。
IT業界は10年経つと本当に様変わりする。
その変化の激しい中で藤田さんは、広告代理業から
新たなメディア産業をということで「アメブロ」と言う
今では最高にメジャーになったブログサービスを徹底的にやり続けた。
改良に改良を重ねながらいくつもの施策を試し、
試しながら新たな施策を始めていく。
その中で「芸能人ブログ」が拡がり
「アメーバピグ」などのアバターの出るコンテンツが普及していく。
そのために過去の執行役員数名を藤田さん自らが更迭し、
新たな人材を起用したとある。
そうして、それは成功し新たな人材がその部署を活性化している。
とともに藤田さんが更迭したと言っている執行役員たちは
サイバーエージェントに残り新たなビジネスを立ち上げてがんばっていることも書かれている。
ここで思ったのは人事に更迭なし!という言葉。
異動してその場所で最大の力を発揮できるようにすることが企業の命題であり、
そのための人事異動であるのだから、
更迭とか左遷という言葉はないのだとと言った
ある人の言葉がまた、蘇った。