副題は「これからのビジネスリーダーに贈る45の視点」とある。
安田さんは米国の大学を出て、20年以上にわたり
PICA(アジア民間投資会社)に勤めた。
言うなれば外国企業で外国人として働いてきた日本人である。
こういう日本人は日本人の中でも数少ない。
多くの日本人は日本企業に勤めて日本文化と
その企業文化にどっぷりとつかり終身雇用の環境の下で育ち、
そうして独特の日本スタイルとでも言える働き方が出来上がった。
日本国内の市場規模がある程度大きかったので、
それだけでやってこられたということもあるだろう。
しかしIT環境の変化と資本の流動性が高くなったことによって
その環境は大きく変わった。グローバル化である。
海外の傘下に入る日本企業や、また海外の企業を買収して
新たな海外の国の文化と企業文化と付き合っていく機会も増えていく。
グローバル化とはそういうことだ。
そして、いくつかの日本企業はグローバル戦略を
さらに強化するための施策を始めている。
ユニクロや楽天は社内公用語が英語になった、
ゴーン社長の率いる日産自動車はもっと前から英語で会議をしている。
安田さんが本書で語っているのは、国際人としてのマナーと教養である。
仕事の仕方、考え方、表現の仕方などがドメスティックな会社と
国際的な企業とでは全然違うらしい。
もちろんアジアの国で日本の感覚が理解できる国や人は何割かはあるだろう。
でもいろいろな国の人々と一堂に会して、
様々な国や言語や宗教の違いを理解しながら
きちんとした対話を積み重ねながらビジネスをしていかなければならない
というのは確かなこと。
そうした習慣を身に着けることがこれから重要なことになってくる。
そして世界のエリートとして、高貴な態度を身に付けることが
求められてくるだろう。
本書はこうしたことの対処法を
様々な角度から実践的に描いている。
日本人は理解できない、日本人の行動や発言がわからない。
と言われないようにするためのヒントがここにある。
俯瞰してみると至極当然でもっともだ!ということばかりなのだが
日本ドメスティックな会社に長くいると見えなくなることも理解できる。
しかし、これからは日本の中で閉じた状態で、
日本人だけでプロジェクトを進めていくことの限界が見えてきている。
集団ではなく個人として世界と社会と人と向き合う人材に
ならなければならないと安田さんは説く。
最後に安田さんの言葉を引用する。
もはや、国対国、企業対企業という枠組みだけでは
世界を理解することはできないし、世界に立ち向かうこともできない。
個人の持つ力が強くなったのだ。