「100万人が訪れた驚きのハコモノ」と本書の副題に書かれている。
ハコモノ行政がこんなカタチでイノベーティブにできるのかと驚いた貴重な事例。
佐賀県の温泉のある観光地方都市、武雄市。人口5万人。
こんな、誰もがあまり知らないような場所にTSUTAYAと協同して、
新たなコンセプトの市民図書館を作った
武雄市長の樋渡啓祐と彼をめぐる様々な人たちのドキュメントである。
この樋渡さんという方は地元の武雄出身で東大から官僚になった。
総務省の官僚だった頃、大阪府高槻市(わたしの実家がある街です)の
市長公室長をやり、そのときに吹田市にある関西大学に働きかけ
関西大学の高槻市への誘致を成功させた。
いまでは関西大学の小中高校、そして大学が高槻市の中に揃っている。
そして30代後半で樋渡さんは武雄市長に。当時36歳!
史上最少の市長ということで話題になったらしい。
樋渡市長はそれから8年、このとくに際立った特徴が
なかったような一地方都市の改革を推し進めていく。
政治・行政にもイノベーションがおこせるのだという事例を数々実行している。
図書館の前に樋渡市長が実行したのが市民病院の民営化。
民営の医療法人?に声をかけて、多くの反対意見を取りまとめながらも実行した。
そして、その後、樋渡市長は図書館にも目を向ける。
既存の図書館をもっと良くしたい、多くの市民が集まる場所にしたい。
そんな時に樋渡市長は「カンブリア宮殿」で増田さんが代官山に
新たなコンセプトのショップ「代官山蔦屋書店」を開店することを知った。
樋渡市長は何とかCCCと話が出来ないか?とアポを取ろうとするのだが、
なかなか会うことができない。
ようやくアポが取れて、代官山の蔦屋書店に行った樋渡さんは
増田さんに「公共図書館をやってみたかったんです!」と言われ、
そこに立ち会ったCCCの高橋さんが武雄市図書館の担当になる。
そこから開館までのドタバタがここに書かれており、
地方行政の仕組みや地元の声をどのようにまとめていくのか?
が興味深く描かれる。
ひとつの図書館では、あるが、そこにはいろんな思いがあり、
その多くの思いをすべてかなえるわけにはいかない。
地方都市の限られた予算で何が出来るのか?最適か?
というのを考え続けて実行する。
うまくいかなかったところは修正する。
これって民間企業の事業も同じである。
そういう意味では本書は誰が読んでも面白く、既存の価値観を覆し
新たなことをやろうとする人たちにはとても刺激的なものになるのではないでしょうか?
その中でも感動したのが普通の業務を淡々とこなしていた地方公務員が
スーパー公務員になったという話。
このプロジェクトを任され、どんどんと成長していく井上課長と錦織係長。
このくだりはまさに人が成長することを見ることの快感が描かれている。
葛藤の中から成長していく姿は多くの人の共感を呼ぶ。
だからこうした事例がドラマや小説、映画になるのだ。
最初、疑っていたり反対していた人たちが実際に開館して、
その評判を見て徐々に変化していく。
そして2013年春の開館から1年経って本書は発行された。
本書を読み終えたのは2014年5月29日武雄市図書館の2階にある「学習室」。
午前11時半ごろ。
そこには多くの市民の姿があった。
実際に図書館に行ったレポートは次回!