ドナルド・マーグリーズ作、常田景子 翻訳。演出、宮田慶子。
海外の日本での未上演の舞台を上演するという新国立劇場のシリーズ。
新国立劇場に初登場の俳優さんばかりをキャスティングしたそうである。
舞台はニューヨーク、ブルックリンにある大きなアパートの一室。
カメラマンのサラ(中越典子)の住居でもある。
彼女はフォトジャーナリスト。
いわゆる戦場カメラマンである。
彼女はイラク戦争の取材時に爆弾の爆発に被弾してけがをする。
九死に一生を得て、
彼女の同棲相手のジャーナリスト(瀬川亮)とともにブルックリンの
彼女の部屋に戻ってくるところからこの舞台は始まる。
中越さんは手にギブス片足にも大きなギブスを付けて
松葉づえをついて入ってくる。顔には傷跡がくっきりとあり、頭には包帯を巻き、
ほほにも大きな絆創膏が貼られている。
売れっ子カメラマンで気の強い彼女は結婚などする必要がないという考え方の持ち主。
彼女の強さに圧倒されながらも、瀬川は彼女の世話をかいがいしく行っている。
事故に遭った彼女は自由に動くことができないので
彼はイキイキと彼女の世話をする。
まるで彼女がおとなしくなり、彼が世話を
できるのをいとおしむように。
そんな帰国後すぐの時期にお見舞いにやってきた写真週刊誌?の編集者(大河内浩)。
50を過ぎているだろうと思われる彼が年が半分くらいの若い女性を連れてくる。
イベント関係の仕事をしている女性(森田彩華)。
森田はいまどきの東京にいるきゃぴっとした女性を演じる。
その姿を見て、でれでれする大河内。
この役の大河内浩がなかなかいい味を出している。
そして中越と森田という二人の女性のまったく違う人生の価値感が対照的に描かれる。
観客はどちらに感情移入するのだろうか?
戦場や難民キャンプなどで写真を撮り続けなければ生きていけないサラ。
一方子供が生まれて、この子のためにできるだけのことをやってあげたいと思う若い森田。
娘ほど年の違う妻をかわいがり受け入れる大河内。
ジャーナリストとしてあまり仕事に恵まれず、
パートナーであるサラとの才能と情熱のギャップに悩む瀬川。
そうした、どこにでもあるような関係を描きながら、
戦地や難民キャンプでの現状が語られる。
サラ(中越)は怪我も治り、そして再び旅立つ準備を始める。
ハリウッド映画とはまったく違う、NYを中心とした米国の演劇での
文化的な表現を観ることが出来る。
これを見るだけでもハリウッドとNYは全然違うのだということがわかる。
7月27日まで。