劇団チョコレートケーキwithパンダ・ラ・コンチャン
近藤芳正率いる演劇ユニット「パンダ・ラ・コンチャン」が
あの社会派演劇の劇団チョコレートケーキと一緒に演劇作品を作った
。いつもやってみたことがないことに挑戦したいのが芸術家魂である。
そのスピリットを持つ両者がタッグを組んで2時間の作品を完成させた。
豪華なキャストで見る劇団チョコレートケーキとでも言おうか?
近藤芳正を初めとして戸田恵子、高田聖子、寺十吾、
そして若手の小野寺賢、清野菜名など。
ものすごい数のお花がロビーに飾られており驚く!
これらのキャストに従来のチョコレートケーキの男優たちが加わる。
設定がすごい!「もしも○○が○○だったら」というドリフの定番コントがあったが、
本作は「もし第二次世界大戦後に日本を占領しようとして
九州から米国がそして樺太を経て北海道からソ連がやってきて、
関東を境にして日本国が南北に分断されたら!」という設定。
その国境の村が舞台となっている。
田舎の村は共同作業を通してなんとかかんとか農業で成り立っている。
その村の真ん中に国境(ライン)が敷かれ、
村に住んでいた家族や親戚が南北に分断されてしまったというもの。
朝鮮半島でもこのような事実があったのではないだろうか?
東西に分断されたドイツでは親戚が完全に東西に分断されたという話を聴いたことがある。
そして、1950年分割統治された南北日本の間で戦争が起きる。
この小さな村にも南北の兵士が監視役として送り込まれるが、
この村の現状を考えると南北の人々が交流することを
見て見ぬふりをしておくのがいちばんいいのだ!という解釈が行われた。
しかし、国家が分断され別の国家になるということは、
そこに住む人たちは「そんなの関係ない」で済まされるものではない。
どこからかやってくる国家の圧力と戦わなければならなくなることは自明である。
本作はこの村に住む家族と親戚たちと国家とを対比させた物語である。
戦争で激しい経験をした人たちがこの村に戻って来て農作業をしながら地道に生きている。
しかし、国家間の思惑によって戦争は起こされ
そのことが家族や親戚の分断を引き起こそうとする。
他人ごとではない。現に今も朝鮮半島は南北に分断されたままである。
南に住む近藤とその妻の戸田恵子、北に住む寺とその妻の高田聖子。
そして子供たち。
最初は仲良く農作業などを一緒に行っていたのだが、
後半になると戦局が悪化して、それどころではなくなる。
見て見ぬふりをしていた兵士たちも自らの国家の戦略によって
兵士という非人間的なものに変化していく。
そこでやはり感じるのは「俺たちには関係ないから」という言葉では
決して済まされない現実である。
チョコレートケーキらしい、古川健脚本らしいリアリズムがそこにある。
そして、ある瞬間、戸田恵子が勇気をもって立ち向かう。
このシーンに古川健の描く希望がある。
それを受け入れるか受け入れないかは意見が分かれるのかも知れない。
しかし、もし○○が○○だったら、という想像力を持つということは
今の私たちにも必要なことなのでは?というメッセージを感じた。
初日満員。この豪華キャストなのにチケット代が4000円代!
若い俳優はさらに伸びしろがあるのでは!と思った。
間や台詞の言い方などがさらに俳優の身体に入ってくれば
もっと面白い舞台になるだろう。
27日まで。その後、大阪、藤沢、所沢、水戸公演。