副題は「市民芸術概論綱要」発行は2013年10月。
2001年に発行された平田さんの著書「芸術立国論」の続編とでも言うべきもの。
東日本大震災を経てさらに
地域コミュニティの大切さやその地域で芸術が
どのように人々のココロの健康に貢献しているのか?
が見直されるようになって来ている。
身体の健康をケアする「病院」や頭の健康に貢献する「学校」については
行政もその重要性は認識しているが、
果たして「ココロ」の健康を養い維持する
「芸術」に関しての行政の認識はまだまだ低いと言わざるを得ない。
そのことに平田さんは危機感を感じ、こうした著書によって
啓蒙されていることが本書を読むとよーく伝わってくる。
地域に密着した芸術の発信基地を持ち、地域住民と一緒になって
いろんな活動をしていくことによりその地域コミュニティが活性化し、
地域自体の魅力が高まっていく。
そうした取り組みを平田さんは数多くやってこられ
本書ではその具体的な事例を交えて、
どのようにやっていけばいいのか?というヒントをたくさん与えてくれる。
僕自身どれだけ舞台芸術を初めとする芸術作品に救われただろうか?と思う。
強いストレスの下で長時間働いているときに
ふと、2時間ばかし、そうした芸術作品に触れるだけで
気持ちが豊かになりまた元気で生きて行こうと思う。
そんなことを実際に感じ経験することが何度もあった。
もし、こうした芸術作品がなかったらいったい自分はどうなっていたのだろうか?とすら思う。
公的支援を得つつ、芸術を通じた共同体を作っていく試みが
これからのこの国を真に豊かな国にするのではないかと思う。
インフラ整備の公共事業も大切なのかもしれないが、
それと並行してこの国の文化芸術政策をきちんと見直すことが重要ではないだろうか?
平田さんは政府や地方自治体と協同してそうした取り組みを
これまで数多く経験されてきている。
その経験と知見が本書では惜しみなく披露されている。
これまでの東京に優秀な人材を送り続けるというシステムを見直す時期に来ている。
それは、さらにグローバルに人材を送り続けるシステムに変更していくということではなく、
地域に貢献できる人材を育てるということが
本当の意味での「地方創生」なのではないだろうか?
中央省庁が地域の現場の事情を深く考えず
予算を分配していくことだけでは決して真の意味の「地方創生」は行われないのでは?
2012年「劇場法」が政党を超えて超党派で成立した。
そして、私たちはこれからどこへ向かうのか?
最後に本書で平田さんが書いた、井上ひさしが宮澤賢治について語っていたことを引用する。
「宗教だけでは熱すぎる、科学だけでは冷たすぎる。
その中間に賢治は文化・芸術を置いたのではないか」