旬な二人の俳優、風間俊介と岡本玲を迎え、鴻上尚史が自らが率いる
若手俳優を中心とした劇団「虚構の劇団」で上演された
傑作「イントレランスの祭」をひっさげてやってきた。
多くの観客でにぎわう西新宿が華やかに彩られていた。
風間俊介のファンだろうか?
小ぎれいにした若い女性が観客席に多い。
いつもの小劇場公演とは違う感じ。これもいい!
と演劇を観に来る人にはとても「寛容」です。
そして本作のタイトル、イントレランスとは「不寛容」という意味だそう。
DWグリフィスの1919年に公開された映画が「イントレランス」という。
映画ファンにとってはとても有名な映画で、この作品も「不寛容」についてが描かれている。
と同時に日本では、映画などの撮影時に組む足場のことを「イントレ」という。
この言葉はこの映画の「イントレランス」からきた言葉であると先輩からきいた。
ちなみに米国では足場のことをスキャッフォールド(scaffold)という。
本作で描かれる不寛容さはまさに現在
様々な国で起きている事象を想起させ人ごとと思えない現実感がある。
お話自体は荒唐無稽なものである。580万の宇宙人が地球にやってきた。
彼らはもともと形が不定形なスライム状なので
地球に定住するためにメタモルフォーゼして人間に姿を変える。
と言っても、どんな人間に変えるのかの基準を彼らが持っていなかったため、
実在の人物と瓜二つのクローンに変身する。
そして、オリジナルの人間に迷惑がかからないようにそのクローンとなった宇宙人は
オリジナルの人間の住むところから離れて暮らすようになった。
というところからこの舞台は始まる。
彼らが地球にやってきて6年が経過し様々な問題が起きている。
日本でも純粋な原理主義者たちが宇宙人を追い出せという運動を繰り広げ
その賛同者が増えている。
宇宙人から岡本玲の姿に変えた女と
路上で通りすがりの人に向けて言葉を書いてその後
その言葉を元にパフォーマンスをするというアート活動をしているアーティストの
風間俊介は恋人同士となり一緒に住んでいる。
ちなみに風間は普通の日本人である。
岡本玲は宇宙人の皇帝の皇位継承権9番目になる方。
8番目までは地球にやってくるまでになくなっており
皇室を継いで皇女になってくれと大高洋夫がやってくる。
その様子を追っかけるTVドキュメンタリーディレクターの福田転球と
宇宙人である男性のアシスタントディレクターが絡み、
この舞台は進行していく。
風間と岡本のキスシーンがあり、岡本のパンチラシーンがある。
岡本は風間と濃厚なエッチをするとその姿が微妙に変化する。
宇宙人にとってはその変化は微妙なのだが地球人にとっては大きな違い。
いうなれば岡本玲が藤田記子に変わるくらいの変化である。
そんなことが次々と起きながら圧倒的なスピード感で物語は進んでいく。
いつもの鴻上さん手書きの「ごあいさつ」に書かれていたが
ツイッターでつぶやいた言葉への無自覚な批判・炎上。
これは今のヘイトスピーチにもつながり、さらには難民問題やテロの問題
フツ族とツチ族との争いなどの民族問題さらには
IS国の問題などにつながっていく。
なぜ、私たちは「不寛容」になるのか?
こうした芸術作品を通して得た知見によって「寛容」さを身につけ
多様な中でもまっすぐに生きて行きたいものだ。
「ここがへんだよ日本人」の番組などの経験が
鴻上さんのこの戯曲に反映されているのかな?
4月17日まで。上演時間2時間。
その後、大阪公演を経て、東京凱旋公演が連休に控えている。