王子小劇場に「花まる学習会」という名前が付いた。
これはいわばネーミングライツというものだろうか?
「CCレモンシアター」や「味の素スタジアム」と同様なのか?
今日、劇場に行って気が付いた。
子供の創造性を伸ばすという意味で演劇はとてもいい!
そんな志から生まれたのか?
そういえば、今回の柿喰う客フェスティバルでも
こども向けの公演を土日の午前11時から行っている。題名は「へんてこレストラン」というもの。
本作は大人向けの公演
「フランダースの犬」を知らない日本人はほとんどいないのではないか?
それくらい強力なアニメコンテンツである。
ベルギーのフランダース地方で育ったネロと愛犬であり唯一の友人であった
パトラッシュの生活と悲劇が描かれる。
ラストシーンがあまりにも有名。村の教会にやってきたネロとパトラッシュ、
栄養失調なのか病気なのか?
パトラッシュが先に息絶え、そしてネロも「なんか、ねむたいよう」などという言葉を残して、
ほんと、眠るように天国へ登っていく。
教会の十字架のあたりから何人かの聖天使が降臨し
ネロとパトラッシュを天国に連れていくのだった。
誰とも戦わなかった二人、そして何の不満や不平を口に出さず死んでいく二人に
私たちは共感し多くの感動を共有した。そんな、物語。
本作を書き下ろした中屋敷法人は当時19歳!その19歳の時にこうした成熟した戯曲が
書けることに驚いた。そもそも、本作は高校の演劇部向けに書かれたものらしく、
青森(中屋敷の出身県)や宮城の高校などで女子高生たちがドイツ軍兵士の役を演じたらしい。
ずいぶん前に、本作は金沢?で上演されたとアフタートークで聞いた。
その時は3人だけの俳優で演じていたらしい。
今回は男優8人が登場して本作を演じる。ドイツ軍のお話である。
第1次世界大戦前の士官学校?から始まり、サラエボ事件が起き、大戦が始まり、
西部戦線にドイツは軍隊を送り込む。あの「西部戦線異状なし」の西部戦線である。
そこでドイツ軍はフランス軍と戦う、遠くにはイギリス軍やオランダ軍がにらみを利かす。
そこに向かって進撃する上官と部下。同じ隊にいる同期。
まるでネロとパトラッシュのようである。
また、みていてこの二人の関係(ヒュンケル=牧田哲也、バラック=田中穂先)が
鎌田行進曲の銀ちゃんとヤスの関係にも見えて来る。
圧倒的に主人に尽くそうとする男の悲哀が共感を誘う。
私たちはそういう物語が好きなのかもしれない。
無私の気持ちで敬する人にすべてを捧げる。
この二人は、ドイツ軍の意向で最前線へと送られるのだった。
そうして、彼らの人生は「フランダースの犬」とつながっていき「フランダースの負け犬」となる。
しかし、中屋敷は「負け犬」でいいじゃないか!と伝えているように思えてならなかった。
組織や国家の論理で命が失われていくことの滑稽さが柿喰う客らしく描かれる。
中屋敷19歳で描いた反戦の舞台である。
それから10年が過ぎて俳優たちが成熟し、演出が成熟した。
柿喰う客の初期に書かれた戯曲の魅力が満載のフェスティバルは26日まで続く。
上演時間90分。