ウェルメイドでハッピーエンドな世界を描いたものが最近少ないなあ!と思っていたが、
本作を見て久しぶりにああ、これこれ!という幸せな気持ちになる舞台に出会えることができました。
作・演出:鈴木聡。
鈴木さんが、ラッパ屋でお書きになっていることは何も変わらないのだろう。
世の中が変わってディストピアを描いたものや露悪的なもの、
社会の矛盾や不公平を描いたものが相対的に増加している。
それは、それで悪くないのだが、時々こうした舞台を見ると、
やはり多くの人に薦めたくなる。
見ていい気持で劇場を出ることができる素敵な舞台を今回も鈴木聡は作り上げた。
客演として円から演出もする女優の谷川清美
そしてカムカムミニキーナの松村武。
松村さんは前回に続いての客演。ラッパ屋の舞台に欠かせない
とぼけた笑いを作ることのできる俳優である。
一緒に舞台を見たMさんが伊東四朗に思えて仕方がなかった、とおっしゃっていたが、
まさにそうした怪優コメディアンぶりを発揮していた。
しかも、声の感じが確かに伊東四朗に似ているのだ。
筋書ナシコこと「ナシコ」(岩橋道子)は42歳のフリーライター。
ある出版社のパーティにやってきた。女友達で同じライター仲間である
46歳の谷川清美とともに。
ある商業ビルの広場のようになった場所。
上手には出版社のパーティ会場に続く入口、
そして上手の階段を上がると別のパーティスペースがある。
真ん中よりやや上手寄りに外に抜ける通路があり、
下手には別の店がその隣はアジアエスニックレストランとバーみたいなものがある。
5つの店舗から出てトイレに行ったり休憩したり待ち合わせをするスペースが本作の舞台である。
舞台真ん中には大きな風見鶏のオブジェがあり室内なのに自動で動いている。
出版社は最近の出版不況で芳しくなく、資金調達も苦しく存続の危機となっている。
そんな大変なときだからこそ、お世話になっている人たちをお呼びしてパーティを開き、
会社はまだまだ健在だというところを見せたいと
友人であり創業者である二人(俵木藤汰・木村靖司)は考えた。
そして、同時に資金を出してくれる資産家の人に二人が別のルートで
別の方にアプローチして何とか乗り切ろうとしているというぎりぎりの状況でもある。
ナシコは24歳の年下のイケメン彼氏がいるのだが、この日大変な局面を迎える。
そんな中、パーティは進み人生の岐路に立った人たちがここに集まる。
鈴木さんの脚本には、こうした状況でも困難さをやり過ごさずに
立ち向かう勇気を持った普通の人たちがいつも登場する。
そうした人たちを見て私たちは励まされ勇気をもらう。
本当に大切なことは何なのか?というメッセージを秘めつつ、
シチュエーションコメディというカタチを取って観客は笑いながら涙を流す。
本作はまるで50年代のウェルメイドな米国映画のようでもある。
特に、音楽の使い方も品がよくしゃれたロマンチックコメディが完成した。
26日まで。土日の昼公演以外はまだチケットがあるそうです。