サブタイトルは「愛していると言うかわりに、空を飛んだ。」
脚本:坂口理子、演出:福島敏朗。
福島さんはCMディレクターをされながら、こうした演劇活動も並行して行われている。
シナリオセンター出身?の脚本家である坂口さんと俳優の源さんと一緒に
この演劇ユニットを立ち上げ毎年1回くらいのペースで上演活動をされている。
第一回公演「銀河廃線」では宮沢賢治の銀河鉄道の夜の世界を描き出した。
2作目は未見。本作も、1作目と同様のファンタジックな世界を扱ったもの。
たぶん、作家の坂口さんがそうした世界がお好きなんだろう。
空と宇宙にまつわるお話。
海が遠くに見える山の上の天文台が舞台となっている。
そこに旅をした女の子(北川弘美)が絵を描きにやってくる。
そこで出会ったのが「ハザマ王」と呼ばれる男性(宮本大誠)。
天国に行ったのか行ってないのか?
でさまよっている人々がそこに集まっている。
戦時中の戦闘機乗りのパイロット、飛行機が出たばかりの頃に空を飛んだもの、
太平洋や大西洋を横断しようとしたもの、
そしてスプートニク号に乗って行ったライカ犬などなど、
人生の途中で命を落とした多くの空に消えていったものたちが
この「狭間(ハザマ)」で暮らしている。
ここまで聞くと、ファンタジックな世界全開というのがよくわかる。
ここで、みんなは新たなグライダーを作って飛ばそうと空へ向けての夢を追いかけている。
作家の坂口さんはその世界にロマンを見い出し
ロマンチックな物語にしようとしたのだろう。
その戯曲を受けて演出の福島さんは、一見難解に感じる劇構造を
工夫を凝らした演出で見ている人に楽しんでもらおうと
いろんな仕掛けを施した。
天文台を模した大きなセット地面には発行する天文学の文字盤、
縦横に白いゴムヒモがはりめぐされそれを使って風や運命の糸を表現する。
上手には大きな丸い穴が地上に向かって大きく空いている。
雲のモチーフなのか?舞台の天井を客席まで覆う、半透明のオーガンジーの薄布が
何本も頭上につるされている。
舞台での身体や生を意識した演出がいい。
特によかったのは「ハザマ王」と一緒にここで働いている?
カワタレ(「タマル」というミュージシャンがアコースティックギターを奏でながら自ら歌う。
歌がむっちゃ上手い!)の生演奏。むっちゃココロに沁みた。
そして、本作のトピックスとしてアナウンサーの住吉美紀が出演しているということ。
茂木健一郎と住吉美紀がやっていた「プロフェッショナル」を覚えている人は多いだろう。
その住吉さんが俳優として舞台に立っているのである。
そして、そして、私にとっては元同僚で俳優になった宮本大誠が出演していること。
いつまでも若い宮本がしゃれたファンタジックな役を演じている。
不思議の国のアリスのウサギの伯爵のような、山高帽をかぶり知的でクールな印象なのだが、
演技の途中でそれが崩れてコミカルになるのがいい!ロックなシーンは最高だった。
俳優を目指して25年以上こうして
俳優活動をやり続けていることに頭が下がる。
また、引き締まった肉体を見て、
身体のコントロールもきちんとしている姿を見て頭が下がる思いだった。
出演者で年齢が上の方ということもあり
舞台上でもカーテンコールでも座長的な役割を果たしながらも
一歩後ろへ下がって若い俳優を立て、その後ろからそっとサポートする。
そんな姿が印象的だった。
物語的には村上春樹の小説にも出て来てつながるところもあるが、
スプートニク号に乗っていったライカ犬の話。
ライカの話を聞いているとなぜか泣けてきた。18日まで!