MITAKA”Next”Selection17thの今年最後の参加作品である。
名古屋で活動している劇団らしい。作・演出は平塚直隆。
平塚さんも俳優の一人として舞台に立っている。
男5人、女1人のキャスト。広い、星のホールの空間をそのまま使用している。
男2人が名古屋の中部国際空港からカナダのトロントに観光旅行に行くというお話。
(以下、ネタバレしますが、これを読んで公演を見ても特に問題ないかと思われます。)
一人の男は海外旅行が初めて。
アルバイトを休んで貯めた25万円でツアーに参加する。
相方の男性は結婚して家族がいる、社会人として働いており
海外旅行は韓国にだけ行ったことがあるという設定。
そして14時間のフライトののち空港でツアーガイドが待っていた。
しかし、そこはトロントではなく、名古屋だった、というお話。
タクシーに乗り込むが、その運転手ももちろん日本人で名古屋の人。
ツアーガイドはホテルに二人を連れて行く。
そのあと坂角と思えるエビのせんべい工場見学をして
その後、エビフリャーの夕食へと向かうという段取りとなっている。
ある種の高度な不条理劇とも言える。
別役実やサミュエル・ベケットが見たら何と言うだろうか?
折り込みを見て、この劇団はまず上演タイトルを決めるらしい。
そのタイトルがこの「ここはカナダじゃない」だったらしい。
平塚さんは、そこからの発想でこの戯曲を書き進めていったのだろうか?
その、あまりにも表層的とも思える表現に
これは実は何か意図があるに違いないと観客の方が考え始めるようになるのではないか?
そのきっかけが来る来ないによってこの舞台の感じ方は大きく分かれるような気がしている。
私見だが、途中からこれは実は「夢幻能」のようでもあると感じるのだった。
現実を受け入れられない名古屋からの旅人は実は、魂であり、
その亡霊が名古屋にやってきて魂の鎮魂を求めているのではないか?
まったく創作意図にない感想かもしれないが、
作・演出の平塚さんにほんとのとこどうなの?と聞いてみたかった。
昔見た、ジム・ジャームッシュの初期の映画を思い出す。
名古屋を舞台にした奇妙なロードムービーであり、
そこに人間の実体はもはやないのかもしれない、と思わせておきながら実は・・・・。
みたいな、ふざけているのか?何なのか?
まったくわからない舞台が完成した。
名古屋で上演されたのだろうか?名古屋の観客はこれを見てどう思うのだろうか?
俳優のセリフ回しが活舌良く聞き取りやすいのだが
リアルとはかけ離れたその演出にも驚きつつ、
後半その演技になじんでいった不思議。
どこまでも奇妙な舞台でした。10月30日まで。