作:別役実、演出:蜂巣もも(青年団演出部)演出の蜂巣さんは
高校時代に演劇を始められたらしい。
その時に大好きだった劇作家が「別役実」だったそうである。
蜂巣さんはその後、京都造形芸術大学舞台芸術学科に進んだ。
太田省吾さんなどが教鞭を取られていたその大学には
春秋座などという劇場もあり、関西で舞台芸術に関する人材を輩出する場所だった。
木ノ下歌舞伎の主宰である木ノ下裕一も京都造形の出身。
蜂巣さんは2013年に上京し、青年団「無隣館」を経て青年団演出部となった。
1989年生まれの蜂巣さんは今年、28歳になる。
若い演出家が創作した舞台。
そこに秘めた何かを感じることが出来たのだが、それがどういうことかを語れずにいる。
この日の終演後、ままごと主宰の劇作家・演出家の柴幸男と
蜂巣もものミニフォーラムが行われたのだが、
そこで蜂巣さんが「演劇」として大切にしていることとして
「言葉」のことをおっしゃっていた。
蜂巣さんは演出家なので
「戯曲」という他者の「言葉」を通じて新たな表現に向かっていく。
本作では別役実の戯曲「木に花咲く」がその他者となって蜂巣ももと出会い、
新たな場所へ俳優たちと向かっていこうとしているのだろう。
私は、その創作の過程に立ち会ったのではないだろうか?
そんな気がした。
この日見た舞台が完成形であり完全なものであるとは
蜂巣さん自身も思っていないだろうことは、ミニフォーラムでの言葉を聴いて
何となく理解できた。
「朝倉少年祖母殺害事件」から本作は着想を得て戯曲が書かれたそうである。
家族が家族を殺してしまう、そして殺した本人が自殺してしまう。
というような事件は過去からずーっと起き続けている。
その家族がこの舞台でも描かれる。
寝たきりの状態のおばあちゃん、動けないのだが口は達者で理路整然と語ることが出来る。
少年はいじめを受けており孤独である。
彼らの気持ちを俳優が身体表現もかねて演じているのだろうか?
決して自然な動きではないそれが彼らの心の歪みなののか?
身体を歪ませながら奇妙な形で動き出す光景が印象に残った。
角川ドワンゴの社長でもある川上量生さんが宮﨑駿にAIで自動生成させた
人物が動くCGの動画を見せたことがあった。
いままで見たことがないような人間の身体の動きを見て
多くの人が凍ったのではないか?
それを見た宮崎駿は激怒した。
こんなものを見たくない、これは人間に対する冒涜だ!
という言葉すら発言されるようなものだった。
そんな、奇妙な光景がセリフ回しとともに眼前で繰り広げられる。
戯曲通りに上演されているらしいのだが、
そうした演出を経ることによってものすごく奇妙な読後感に襲われる。
その独特なトーンは新たな試みとして賞賛されるべきなのかも知れない。
ただし、その創生過程を観客は見ることになるので、
忍耐力と想像力が強く要求される舞台でもあった。
上演時間75分の奇妙な体験です。22日まで。