山内ケンジの岸田戯曲賞を受賞した戯曲「トロワグロ」の映画化。
あの舞台での面白さが、映画というメディアに変わっても、良く伝わってくる。
というのも、山内監督はそもそも映像の世界の人なので、
その特性を良く理解しているから。
映像表現だとここで寄りを入れていくと効くね!
みたいなことをすべて織り込んで映画の演出が行われたのだろう。
大きな洋館の屋外のテラスを舞台にした一幕場劇ではあるのだが、
映像化することによって効果が出るだろういろんな編集や
カット割りの手法などが使われている。
この映画、実は昨年、期間限定のナイトショーということで
新宿武蔵野館にて上映されたのだが、その時にお客さんが入りすぎて
毎回常に満席状態だったらしい。
そして、このたび2月18日から再度「新宿武蔵野館」で上映が決まったそうである。
時間は21時からなので残業をしても行ける。
夕食をとってから見ることができる。
この映画は大人の艶笑喜劇である。
映画界では、古くはエルンスト・ルビッチ、戦後のビリー・ワイルダー
そして現在も意欲的に創作を続けているウッディ・アレンなどの系譜に
属する大人の鑑賞に耐えうる喜劇映画である。
艶笑と書いたのは、まさに山内さんならではの色っぽく感じるシーンが満載。
色っぽさは生きるチカラや活力を感じさせてくれる。
このテラスで富裕層たちはそうした欲望を徐々に出していく。
平岩紙の二の腕?を中心として様々な人々の思惑が交錯する。
色仕掛けや仕事の営業などなど、
大人が見ているとあーあるあるみたいなことが
山内ケンジの描く少し奇妙なテイストで描かれる。
大爆笑ではなくクスクスと笑う、そんな感じの映画である。
色っぽいという生きる欲望と並行して描かれるのが岡部たかしの役柄。
彼は大病を患い胃を全摘出しており以前は90キロあった体重が激減し
見た目もすっかり変わってしまっている。
彼は、いろんな事情でこのホームパーティーに出席しているらしいのだが
体調が完全ではなく顔色の悪さをメイクでカバーしている。
そんなシチュエーションである。ここで暗喩されるのは「死」である。
生きるチカラと対極にある「死」の予感を
岡部たかし自らも感じており生きるチカラがなくなっていくとは
こういうことかもしれないなとこの映画を見ていて
常に感じさせられる。
岡部は時々気分が悪くなって倒れ込む、男女や男同士の関係が
同時に進行していくなかでゆるやかに死に向かっている男の姿が対比的に描かれる。
これってルキノ・ヴィスコンティの「ベニスに死す」みたいじゃないか!?
「ベニスに死す」の主人公は伝染病にかかってしまうのだが
美少年との邂逅を楽しみにしており顔色の悪いのを隠すための
下手なメイクをしてスーツを着込んで海岸にやってくるのである。
そこにマーラーの交響曲第5番が流れる。
こうした「死」の観点からも大人のための大人の映画である
と言えるのではないだろうか?笑える艶笑喜劇の先にそんなことが見えてくる。
俳優の演技が舞台と同じメンバーなので見ていて気持ちがいい!
来週の土曜日、2月18日からです!