作:ワジディ・ムワワド、翻訳:藤井慎太郎、演出:上村聡史。
2014年にシアタートラムで初演された本作は圧倒的な評価を得て、
読売演劇大賞、文化庁芸術祭大賞などをはじめとする様々な賞を受賞した。
今回は3年後の再演である。キャストもスタッフも2014年とまったく同じ。
なので、本公演のチケット早々に完売!
当日券があるらしいというのでトライしたらすんなり電話がつながって予約することができた。
レバノンで内戦を経験し亡命した作者ならではのリアルな話が満載の舞台。
母親が二人の子ども(息子と娘:二卵性の双子)に手紙を託す。
彼らの父親へ1通、そして彼らが知らなかった兄へ1通。
二人の子どもたちは、父と兄を探す旅に出る。
中東で起きていることは復讐の連鎖である。
ある家族や仲間が殺された暴力を受けた強姦されたことを受けて、相手に同じことを行う。
そして相手がまた今度はこちらにやってきてと「やったら、やりかえす」
の連鎖が延々と続きそれは終わらない。
人間は人を愛するがゆえに戦争を行い続けるのだ!
という言葉を改めて思い出す。愛する人がひどい目に遭ったことを
見過ごすわけにはいかないのは世の常だろう。
そして復讐するものは多分、自らの命を顧みずに復讐を行なっているのだろう。
作者のワジディさんは、その現実を冷徹に見つめる。
そして、彼らが生まれた環境によって、信じるものが変わる。
信じるものが違うというだけで争いが起きる。
そうして最後には、いろんなものが狂ってしまう。
この舞台にはその狂気がある。内戦も戦争もテロもすべてが同じ文脈で起きるのだろう。
寛容性を忘れないように私たちはこの現実にどう向き合えばいいのか?
を考えるきっかけになる舞台でもある。
この日は、学生団体が入りますということで多くの制服を来た学生が来ていた。
しかも女子高だろうか?男子高生はいなく、女子高生の制服もバラバラ!
上演は休憩入れて3時間半近く。
休憩時に「シーン」としていた舞台が
高校生たちの「これどういうこと!?」みたいな雑談が始まり
はじけるように彼女たちの言葉が劇場内を包んだのが印象に残った。
彼女たちは何を感じてこの劇場を出ていったのだろうか?
麻実れいをはじめとする俳優たちがいい。
那須佐代子、岡本健一、栗田桃子、中島しゅう などなど。
特に麻実の運命を受け容れながら懸命に生きて
子供たちと向き合った母親の役がすごかった。
そんな状況でどのようにして人は希望を持って生きていくのか?
作者のワジディさんの思考の軌跡が
この舞台の戯曲になったのではないだろうか。19日まで。