年に1回のMONOの公演。
最初にMONOを見たのは
「その鉄塔に男たちはいる」の再演。
中野の劇場「ポケット」だった。
その後、中野のわびし気な焼き鳥やさんで焼き鳥を食べビールを飲んだのを思い出す。
調べたら2001年のことだった。
高野しのぶさんのブログで観劇レポートを掲載されていたのですぐにわかった。
あれから16年!男ばかりのむさくるしいひょうひょうとした劇団だった。
ここ数年?あるいはもっとか?MONOの公演に女優陣も加わるようになった。
作:演出の土田英生さんは先日50歳になった、とアフタートークで語っておられた。
50歳代になると確かに初期の「老い」を感じるのかも知れない。
そんな土田さんが
いつまでも見た目「若くいられる薬」が一般的になった時代のお話を作った。
高校の同窓会。教室を模したカラオケボックス?あるいは廃校を再利用したカラオケ学校?
が本作の舞台である。
そこに99歳になる高校時代の同級生たちが集まってくる。
実は法制度が改正されて100歳の誕生日を迎えるときに
自らケアセンターみたいな場所へ赴き安楽死をしなければいけないと決定された。
尼子役の金替康博が100歳の誕生日の日にみんなが集まって来たのだった。
尼子はこの同窓会が終わったその足でセンターに行かなければならないのである。
カズオイシグロの小説「わたしを離さないで」にも似たある種の生きることの諦観が描かれる。
語り口は、MONOらしいひょうひょうとしたユーモアに包まれたものである。
しかも京都を中心とした劇団なのに標準語でセリフは語られ
時々土田の出身だろうか?三河弁?名古屋言葉が出て来て、独特な雰囲気を醸し出す。
俳優たちは「若くいられる薬」をそれぞれ飲んでいるという設定。
薬の量や効き目によってそれぞれ違って見える。
99歳のさやか(松永渚)はまるで女子高生のようである。
彼女は99歳ながら70歳以上離れた28歳の男性と婚姻関係にある。
ちなみに松永さんの実年齢は1991年生まれの25歳。
同じく同級生だった双子の「けい」(高橋明日香)と「りく」もこの同窓会にやってくる。
「けい」は、「若くいられる薬」を飲んでおり
「りく」は「若くいられる薬」を飲むのを辞めた。
その対比などを通じていろんなことを感じさせてくれる。
カラオケ屋さんの設定なので何度も歌を歌うシーンが出てくる。
「りく」役の浦嶋りんこは、実際の現役ミュージシャンでヴォーカリストでもある。
実際に「若くいられるための薬」が開発されているらしい。
NMN(ニコチン・アミド・モノヌクオチド)という物質などの臨床試験が
慶応大学などで2016年に始まったそうである。
若くいたいという欲求と自然に老いてそれを受け容れるという感覚。
そして100歳になったら安楽死をしなければならないという諦観が
まぜこぜになったいろんなことを考えさせられる、
奇妙な脱力系お笑い舞台。29日まで。上演時間90分。