新自由主義経済とグローバル化が進み、富が一部の富裕層に集中し格差が拡がっている。
都市に人々は流入しつづけ人口密集による渋滞や満員電車を我慢しながら
私たちはスマホやSNSに頼って何とか暮らしている。
そんな時代だから、こうした生き方への反動が出てくるのも当然である。
地方に移住し、ゆったりとした生活を送る人々も増えてきている。
資本主義経済はもう終わりを迎えているのではないか?
本当の幸せって何だろう?
そんなことを考え感じている人は、
実際に移住してしまえる人以上に多いのだろう!
そんな時代だからこそターシャ・チューダーの生き方を描いた
こうしたドキュメンタリー映画を見るという価値が重みを増す。
米国はバーモント州の片田舎、緑に囲まれた質素だが温かいターシャが住む
一軒家の何年かを追ったドキュメンタリーである。
ターシャの生い立ちから始まり、結婚して子供が出来、その後、離婚する。
結婚後すぐに、ターシャは自ら絵筆を取り絵本を描き続けた。
それが、ターシャの収入源となる。
近くでとれた野菜や果物、ミルクや卵、時々、チキンなどを食べて暮らしていく。
そんなつつましやかで静かな生活をターシャは92歳でなくなるまで続けた。
テレコムスタッフの制作チームは、この場所を何度も訪ね、
10年間に渡って多くの撮影記録を残した。
NHKなどでも何度かターシャの番組を見ることがあった。
すべてテレコムスタッフの制作である。
ターシャと制作スタッフのやわらかな友情が何年かかけて培われていったのだろう。
その信頼関係がきちんとこの映画には記録されている。
ターシャとその家族たちそして愛犬のコーギー犬。名前はメギー。
ちなみに、この家のことを「コーギーコテージ」と呼ぶそうである。
このコーギー犬がアニメーションになって映画の中で何度か登場する。
映画の中で語られるのだが、実は、ターシャの親は
「森の生活」を記したヘンリー・デイヴィッド・ソローとも親交があったらしい。
米国にはシリコンバレーやウォールストリート的な価値観もあれば、
こうしたターシャの暮らしやシェーカー教徒のように
質素に自然と調和しながら暮らす人たちが混在している国でもある。
ま、もともとナバホなどのネイティブアメリカンはそうした暮らしをしてきていたのだが、
欧州の侵略で変化したのであるのだが・・・。
同時録音から聞こえてくる木々が風でこすれる音や鳥やその他の動物たちの音、
水が流れる音など、どれもが身体の奥深くに沁み込んでいくようである。
そして、日々の暮らしの中で行われる日常を淡々と記述している。
このことこそ本当の意味での幸せで豊かで満ち足りた生活なのかも?
自然の恵みをいただき、それで満足できる気持ちを持って暮らすこと。
私たちがいつの間にか忘れそうになっていた感覚が呼び起こされる
ドキュメンタリー映画である。
そして、こうして生きることの中にはしなやかな強さが必要であることも同時に知ることになる。
ターシャの著作の多くがKADOKAWA/メディアファクトリーで出版されている。
http://www.mediafactory.co.jp/book/tasha/
角川系の映画館で4月15日から公開。