衝撃のドンデン返しのシーンに衝撃が走った!怖い!
そして実際にこうしたことはこれから起きるだろう!
そんな他人事ではない舞台。
ネタバレになるので決して書けないが、驚くこと必至のこの展開は
是非、実際に見て欲しい。特に40代以降の世代にはリアルに届くのではないだろうか?
東京タンバリンらしい、お洒落でスタイリッシュなテイストを残しつつも、
成熟し、新たな段階に向かおうとする試金石のような作品。
タレントとしてテレビに出ていた美人の母親(山崎美貴)は60歳を迎える。
一年前に夫に先立たれ、一周忌を迎える。
そこに集まって来た娘(長尾純子)とかなり年上の彼氏(瓜生和成)
さらには長男夫婦(森啓一郎・ミギタ明日香)、
タレント事務所のマネージャーさん(青海衣央里)と若いタレントの卵(宮下かな子)、
そんな人たちが集まって一周忌を行った。
娘はヨガのインストラクター?みたいな仕事をし、
母親と同じタレント事務所にマネジメントをお願いしメディアなどに登場し始めている。
彼氏はバツイチで娘より年が一回りも上の47歳。
彼氏役の瓜生さんは今回見て思ったのだが棋士の羽生善治に似ている。
今度、この二人は結婚するらしい。
母親は実家をそのままにして夫と別のところで住んでいたらしい。
母親は夫の死後、その家に一人で住み続けている。
時々ハウスクリーニングの人や野菜農家の人たちが訪ねて来てたわいもない会話をする。
利害関係のない人たちが集まってまるでシェアハウスのような感じ。
母親はここに一人で暮らすことにこだわり、実家の一戸建ては空き家のままである。
空き家にしておくのなら、実家はもう必要ないのでは?と言い出す娘。
母親はあの家には想い出がたくさん詰まっていると言い、そのままにしておきたいと言い張る。
議論は平行線をたどったまま。
無人の一戸建てに娘や長男が時々やってきてメンテナンスをチェックする、
というようなことが続いている。
母親はタレントの仕事はほとんどなくなり
数年前にエッセイ集を書いて出版したあとなにも仕事がない。
母親が一人できままに暮らし、時々やってくるハウスクリーニングの人や
野菜を持ってきてくれる人たちと交流しながら生きていく暮らしもいいのでは?
と思うのだが、それを心配し一緒に住まないか?と言う「嫁の家」に嫁の親と一緒に住んでいる長男!
また、娘の年上の彼氏も結婚した後に、お母さんを呼んで一緒に暮らさないか?と言ってくれてもいる。
私も大阪で母親が一人暮らしをしているので、本当に他人事でない!
母親は地元のコミュニティで人間関係が出来ており、
その関係を壊してまで、というのはよくわかる。
仕送りはしているが、それでいいのかと考える私たちの中にもジレンマはある。
この作品はそんな私たちの気持ちを照射し、考えないようにしていた
現実を考えるべきことに転換してくれているのかも知れない。
「ただいま」や「おかえり」と言える暮らしは、確実に少なくなっている!
そんなことを考えさせられた。
こうした未来がまさにすぐそこにやって来ているのか?
上演時間90分。7月3日まで。作・演出:高井浩子