「性(セックス)」についての様々なエピソードが詰め込まれたオムニバス。
月曜日から金曜日までの朝4時の高架下での若者たちの青春群像劇。
俳優たちはほとんどが下着姿で演技を行う。
男女の性、男性同士の性、女性同士の性、それらが交じり合った性。
いくつもの性の情景から「生きる」という力強さが見えてくる。
そして「生きるチカラ」の「性」(セックス)と対比的に「死」の影が描き出される。
戯曲は深津篤史。彼の率いていた劇団「桃園会」の舞台を何度か見た。
京都をベースに活動していた集団だった。
深津さんは1967年生まれ。2014年に46歳で亡くなった。
今回の公演は「深津演劇祭~深津篤史コレクション舞台編」という副題がついている。
深津さんがあこがれていた坂手洋二率いる燐光群が上演する。
人のつながりを大切にする演劇人らしいなと演出をされた坂手さんのことを少しかっこいいと思った。
本戯曲は20年前の1997年に書かれたもの。
2年前の1995年1月17日午前5時46分52秒に阪神淡路大震災が発生した。
深津さんの実家は芦屋である。
この時の経験は深津さんの創作活動に生涯影響を与えたそうである。
その体験からこうした戯曲が紡がれたらしい。
劇自体にはわかりやすいストレートなメッセージみたいなものはないのだが、
全体を通して感じられるものが確かにある。
まずは、若者たちの「青春!」ということ。
ちなみに鴻上尚史さんも60歳近くになっても青春を描き続けているなと感心するが
深津さんも同様の青春の描き手だったのだな!と今回初めて気づいた。
青春はキラキラばかりしているわけではないかっこ悪くほろ苦いところがたくさんある。
若者たちのきらめきを深津さんはやさしく丁寧に掬い取る。
その感覚に共感できるかどうかが、この舞台の成否をわけるのかも知れない。
そして、もう一つは「青春」に対比される「死」に対する感覚みたいなもの。
20年前の戯曲なので若い観客にもわかりやすく伝えるために
舞台が始まる前に俳優二人が前説として
登場人物たちの名前にちなんだ話をわかりやすく面白くまとめてくれている。
ここから自然に本編へ導入されていくのである。
坂手さんが書き加えたのだろう。
じょん万次郎の手になる美術が面白い!まさに高架下なのか!と合点する。
そして、燐光群の音響と言えば、島猛(ステージオフィス)。
彼の手になるサウンドデザインは毎回、燐光群の舞台を切れのいいスタイリッシュなものにしてくれる。
上演時間約90分。
この日は終演後の特別企画として「リーディング」が行われた。作品は「月灯の瞬き」。
これも青春群像劇だった。
芦屋に生まれて京都の大学から演劇活動に入った深津さん。
世間や企業やバブルにもまれなかった純粋性が
生涯、青春を描かせたのだろうか?19日まで。
劇団に直接連絡してチケット予約出来ました!
http://rinkogun.com/