スズナリで上演されて大評判だった舞台の再演らしい。
この数年の詩森ろばさんの活躍は目をみはるものがあり、
もはや「ろば」などという呑気な名前が体を表していないのではと危惧する。(笑)
詩森さんは長年活動してきたこの「風琴工房」という劇団名を変える。
2018年度からはの新たな名前は「serial number」。
製品の個体についているシリアルナンバーの意味なのか?
俳優の田島亮と一緒に稽古する場をこういう名前で呼んでいたらしい。
一緒に本作を見たTさんに聞いたのだが、
田島さんは以前、新国立劇場の公演に寝坊して公演が中止になったらしいと。
ウィキペディアから引用する。
2013年4月21日、主演舞台『効率学のススメ』で、時間の勘違いで遅刻し公演中止となった。
その責任を取る形で5月8日付の自身のブログで、当面の間、芸能活動を自粛し
5月末で所属芸能事務所との契約を終了、ブログも閉鎖することを発表した。
その後、詩森さんは田島さんを応援し続けておりこのたびの公演となった。
田島さん4年ぶりの復帰公演。
彼のファンだろうか?若い女性の観客が多く、
いつもの風琴工房の舞台と違う観客席の雰囲気だった。
いつもと同じなのは男ばかりが登場する
男くさく社会派な舞台であるということ。
詩森さんはそういった世界を描くのが本当にうまい。
こうした世界観を描く劇団はほかにもある。
古沢健が座付き作家、日澤雄介演出の「劇団チョコレートケーキ」や
野木萌葱が主宰する「パラドックス定数」など。
その中でも詩森さんは会社や社会人みたいなところにフォーカスを当てるものがいい!
ヘッジファンドなどを扱った舞台も秀逸だった。
詩森さんは演劇界の池井戸潤?
本作も社会人のプロアイスホッケーチームを扱ったもの。
アスリートの選手生命は人間の寿命と比べて長くない。
サッカーなどはおそらくキングカズ(三浦知良)のような選手を除けばせいぜい20年だろう。
その誕生から引退までを追いかけるファンは
その中に自分の人生を投影するのではないだろうか?
選手生命が短いという限りのある貴重な時間を共有することこそが
スポーツが強い感動につながっていく理由の一つでは?
本作の中で、監督と14人の選手たちすべてに詩森さんはフォーカスを当てていく。
それぞれに人生がありキャリアプランがある。
例えば、もう引退だなと思ったときに彼らがどのように考えふるまうかで
人間の本当の意味での品位が問われるのではないだろうか?
演出が素晴らしい。客席は前後からアイスホッケーのリンクを挟んで見るという構造。
中は回り舞台になっており、天井からは電光掲示板が吊るされており
得点盤になったり選手紹介のモニターとなったりする。
音楽とヒップホップのダンスをうまく使いながらPOPで切れのいい舞台を構築している。
実際の試合のシーンがダンスの群舞となっておりそれがかっこいい!
話題になった「テニスの王子様」などの2・5次元の舞台にも通じる力強さと大衆性があった。
新たな詩森・田島ユニットのプロローグであり、来年から始動する「serial number」の前哨戦!
俳優の年齢の幅が広いのが舞台に奥行きを与えてくれる。
23日まで!上演時間2時間10分少々。