トラッシュマスターズの公演は駅前劇場がいい!
これまで、この劇場で見たトラッシュの公演はすべて面白かった。
駅前劇場の守護神などに守られているのか?
少しきれいにリノベーションされたビルは、トイレもきれいになった。
そして、タバコの煙が気にならなくなり快適!
上演時間2時間30分!
現代社会の諸問題がこれでもか!と詰め込まれた問題満載の舞台!
ありとあらゆる現在の問題をこのように総合していくと
そこから見えてくるものがあるんだ!と感じる。
それこそ本作の劇作家の中津留章仁の真骨頂ではないだろうか?
彼の持つ社会の矛盾に対する純粋な想いがこうした舞台を作り出す。
非常にジャーナリスティックな視点からフィクションを描き
そのフィクションがリアリティをもって私たちに問いかける!
これでいいのですか?本当の価値は何ですか?
みたいな?
本作のエンディングシーンに中津留の考える
純粋な希望みたいなものが見えた。
絶望から這い上がるとそこにはなんとなくの希望みたいなものが見えてくる。
そのぼんやりとした希望に向かって一歩ずつ進んでいくことこそが
私たちが生きるということなのでは?と
中津留さんは考えているのだろうか。
舞台はある家族のマンションの一室。
大手企業に勤める夫と元同じ会社の同僚の妻。
大学生の息子がいる。典型的な大手上場企業の家族。
(これ以降多少のネタバレあります、が、
この舞台の強度が半端ないので読んでから見ても面白いはず。)
しかし、その会社が何年か前から粉飾決算を行っている、
という疑惑が浮上する。
夫は半導体事業部の営業部に所属している。
ここの部門は利益が出ているのだが縦割りで他の部署が
どうなっているのかは経営幹部しかわからない!
そして企業戦士として会社に忠誠を誓う夫。
彼の家族が住むマンションの沿線の鉄道の
高架計画が持ち上がっているという噂がこの地域住民に拡がる。
日照権などの確保のために反対運動をしようとする人々。
妻と息子はその運動に参加しようとする。
夫の会社は高架化によって新たにできる駅などの施設のエレベーターや照明などの
受注を請け負っている。
夫は家族へ「反対運動なんかやるな!」と言う。
そんな矢先にメディアで会社の粉飾決算のことが報道されるという
一斉社内メールが飛んでくる。粉飾の疑惑は真実だった!
そこからいろんな環境が急転する。過去の夫の不倫。不倫相手とのこと。
そしてそれが原因で妻がうつ病になる。
息子はマザコンで母親は息子を求める。そのことについて悩む息子。
夫は自分勝手で企業戦士だったのだが、会社のリストラの対象になり
退職を余儀なくされる。同僚の仲間は、海外での原子力事業の破綻を予想し、
情報公開の上申をするが上司が受け入れてくれない。
情報公開を盾にして隠れる同僚。
妻はこの同僚と学生時代付き合っていた。
しかし、ある時期別れてしまう。同僚に未練がある妻。
こう書くとまるでドロドロのメロドラマのようであるが、まさにそうなのです!
大映のTVシリーズなどで映画監督の増村保造などが監督していた
激しいドラマが量産された時代があったが
まさにそれを髣髴とさせる。
実名は出てこないが、あのことか?とわかるようなことがたくさん登場する。
共謀罪の法律がこのように適用されるかもしれない!
というシナリオも!
このシナリオが現実のものにならないように
中津留さんはフィクションを創造し続ける。
芸術家の大切な仕事の役割ではないだろうか?
体当たりで妻役を演じた川崎初夏の演技がすごい!
23日まで!