通路席がすべて埋まる。もうこれ以上は入りませんというぐらいの観客でまさに鈴なり状態。
上演時間約1時間50分の人情喜劇?
赤堀さんらしい社会の隅っこで暮らしている人たちに焦点をあてている。
新井浩文ファンの女性がたくさんいらしている。
こうして目の当たりにするとものすごい人気だということがわかった。
ほかに荒川良々、村岡希美、根本宗子、井端珠里などの豪華なキャスト。
そして、水澤紳吾の個性が際立っていた。
これだけのキャストを起用してスズナリという小さな小屋で上演する贅沢さ!
がひしひしと伝わって来る。
舞台は船橋から津田沼あたりの千葉の北西部。
私は東西線の「妙典」に住んでいる。二駅先が「西船橋」である。
地味で特徴がない街。
築40年のボロアパートの大家。
日がな昼間はパチンコをして散歩をし夜はスナックやキャバクラで遊んでいる男が新井浩文。
どうしようもない人たちを描かせたら天下一品の赤堀さんならではの設定。
腐れ縁の幼馴染だろうか?現場作業をしている男(山本浩司)。
彼が新井に貸した2万円を返してくれというところからこの舞台は始まる。
場所はガストの喫煙席。
彼らのやり取りを見ているとまるで古典落語に出てくる八さんや熊さんのような人たちばかり。
飄逸な会話が苦笑ともいえる笑いを誘う。
その情けない中から生まれてくる悲しみの笑いこそが赤堀さんの真骨頂。
赤堀さんはこの街で父親がやっていた自転車屋を継いで細々と暮らしている。
おやじさんはボケが始まっており自宅で赤堀さんが面倒を見ている。
45歳独身男と、認知症になった爺さんの二人暮らし。
時々、新井がこの店にやってきてくだらない会話をする。
夜になると行きつけのスナック(チーママ役は井端珠里:山本と8年間同棲している)
に行ってカラオケを歌う。
ある日、大家の新井がボロアパートに住んでいる店子の中年女性(村岡希美)46歳独身
を誘って赤堀とスナックに行く。新井は赤堀に幸せになってもらいたく、
彼女を紹介することにしたのだった。
ここから物語は大きく展開していく。なぜ、赤堀は今の仕事をしているのか?
なぜ、結婚していないのか?村岡は、なぜ一人暮らしなのか?
何に困っているのか?などの秘密が明らかになっていく。
村岡の発言をきっかけに、新井が動き出す。
そして大変なことに巻き込まれていく。そこから彼らの疾走が始まる。
サウナでチンピラまがいのことをやって
いきっている荒川良々とその射程の松浦裕也。
荒川の行きつけのサウナに新井が会いに行く。
新井、山本、荒川、松浦という4人の情けない感じの男たちがあることに巻き込まれ疾走する。
彼らを巻き込んだのがヤクザの水澤紳吾。
彼は地下アイドルのマネージャーもやっている。
地下アイドルの根本宗子を連れてこの4人のところに水澤がやってくる。
突然前触れもなしにやってくる圧倒的な暴力が描かれる。
この恐怖と情けない男たちのとぼけたユーモアが共存しているのが赤堀さんならではの舞台。
そして、赤堀さんは今回さらに自らの表現を突き詰めた。
ある種、精神の深いところをえぐった純文学のような表現が登場する。
当日券は抽選みたいですが毎回出ているようです!
8月13日まで!今年の演劇界の話題に残る一作では?