作・演出:柴幸男。オーディションで選ばれた高校生10名が出演する舞台。
スタッフにも高校生が参加しており、集まった高校生たちと柴幸男が一緒に作り上げた。
この経験は彼らの生涯の思い出となるだろう!
こうした試みが拡がっているのを嬉しく微笑ましく思う。
公共劇場のいつくかでこうした取り組みが行われている。
東日本大震災の後に福島の高校に
そうそうたる劇作家や演出家が出かけて行って舞台を創作したのは
みんなの記憶に残っているのではないでしょうか?
高校生が演じた「転校生」や「ブルーシート」そして「ハロースクールバイバイ」などなど
多くの傑作が生みだされている。
演劇という行為の根っこにあるコミュニティの絆を作る
という効用が生かされている。
みんな、懸命に一つのことをやり遂げる。演じてみる。みんなで話し合う!練習する。
そして緊張しながらも観客の前で上演する。
この一連の行為が人を成長させるのでは?
演劇教育の効用が言われるようになったが、
そうした基本的なコミュニケーション力を鍛えることが
これからの高度IT社会・人工知能が活躍する社会で
「人間だからこそできること」を育てることになるのではないだろうか?
本作は再演ではあるが前回とまったく異なるテイストの舞台に仕上がった。
近未来の地球。温暖化が進み人間たちの多くは火星に移住していく。
残されたものがこの高校で文化祭の準備をしている。
3学年合わせても10人に満たない子供たち。
その中の一人のスピカという女の子が、
ある日、突然転校して火星に行くことになる。
同時期に、偶然にも火星から一人の転校生の女の子がこの学校にやってくる。
身体の弱い転校生の女の子はこの星に死ぬためにやってきたと語る。
10年かけて火星からやってきた女の子はスピカと一人二役。
輪廻転生のような世界観を感じる。
柴さんらしいコスミックで哲学的な言葉がロマンチックに響きわたる。
谷川俊太郎の詩集「二十億光年の孤独」を読んだ時のような感情が拡がる。
それを高校生が演じている。
この時期にしかないキラキラとした「生の輝き?」みたいなものが
この年齢の人たちには確実にある。
本当に「くったくなく笑う」ことのできる
そんな時期に生きる高校生たちを見て、自分が高校だったころを思い出す。
感心したのは全員が楽器を演奏しているということ。
ピアノやドラム、カホーンやギター、キーボード、鉄琴、そしてバイオリンなどなど!
楽器の生演奏を行いながら演技も同時にこなしていく。
観客としてその体験がとても気持ちいい!
循環コードが自然のバイオリズムと重なり、独特の世界観を作り出す。
そして、高校生たちが今この瞬間を懸命に演じる。
「生きている!」ということを実感させてくれた舞台。
上演時間85分。27日まで。