MITAKA”Next”Selection18th.三本目の作品。
毎年毎年新たな劇団を紹介しつ続けている三鷹のこのプロデュース公演!
過去の事例を見るとわかるのだが、ここで取り上げられた劇団の多くが話題になり、
その後大きくブレイクする。
勢いのある若手劇団にとってここで上演できるのはとてもいいチャンスとなるだろう。
牡丹茶房という劇団を知らなかったのだが、本作を見て作家の脚本のチカラに驚いた。
脚本・演出は烏丸棗(からすま・なつめ)「棗」は「なつめ」と読むらしい?
この劇団を烏丸が立ち上げたのが2013年のことと書いてあった!
それから4年しか経っていないのに、こんな脚本が書けることに驚く!
最近の韓国映画には脚本が良く練られているものが多い。
そんな印象がこの舞台にもあった。
おどろおどろしく耽美で悲しく悲惨な物語なのだが、
その耽美性が見るものを魅惑して倒錯の世界に引き込まれる。
世田谷パブリックシアターで上演された名作「春琴抄」にも似た、
倒錯の美学がここにある。
澁澤龍彦や江戸川乱歩の大人向けの創作にも似た美しいけど気持ち会悪くて怖い!
「きも美しい」世界を、烏丸棗さんは好きなのだろう!
折り込みにこんな文章があった。
「人の業は、美しい。世間が言う美しいものは、眩しくて、恐ろしい。
私の信じる、仄暗い美学に溺れて頂ければ幸いです。」
そして本作は、見ていてこれは烏丸さん本人のことについて
書かれているのではないだろうか?みたいな感覚を持った。
作家と作品は別物であるとも言われるが、この作品に関してはどうなんだろう?
ある劇作家の女性(沈ゆうこ)が主人公。
彼女はマリアと言う猫(奥野亮子)とルームシェアしている茜(赤猫座ちこ)と
一緒に住んでいる。茜は女優として舞台に出ていたのだが
30歳を前にして、なかば女優を諦めたように
地下アイドルの活動をしてSNSなどでファンとつながり
定期的にそうしたファンに向けてライブをし現金収入を得る。
なかなか目が出ない劇作家と地下アイドルで生計を立てている女優。
二人の、現状へのいら立ちがお互いを刺激し事件が起きる。
そうして、ここからこのアパートの一室での話は大きく変化していくのである。
円朝の落語の「鰍沢」や「四谷怪談」なども髣髴とさせる物語。
烏丸さんのような若手の作家がこうした脚本を書くことに驚く。
そしてこの脚本は映画やドラマの脚本になるなあ!と思いながら見ていた。
物語の構造がわかりやすく力強く物語を進めていく。
深夜の実験的なTVドラマや日本映画、それとも今ならば、
ネットフリックスやアベマTVやアマゾンプライムビデオなどの
配信コンテンツの方がいいかも知れない。
自由に表現できる場が拡がっていることが
これからメディアや表現者の世界にもさらに変化を促していくのではないだろうか?
2時間15分あるこの舞台、まったく淀むところなく最後まで突っ走った!
次々といろんなことが起きていくので目が離せない。
端正な立体を活かした舞台美術も美しい。(美術:愛知康子)
29日まで。